参院選まっただなかの7月。候補者が街頭演説で有権者に政策を訴えている。今回の選挙の重要なテーマの一つが社会保険料である(写真:アフロ)
- 財源と患者の負担から読み解く各党の方針
- 自民党は、医療従事者の賃上げと公定価格の引き上げを主張
- 公明党は、医療従事者の賃上げと子ども医療費無償化を推進
- 立憲民主党は、医療従事者の処遇改善と公立病院の支援を重視
- 日本維新の会は具体策を並べて、「医療費4兆円削減」を目指す
- 国民民主党は「給与2倍」を掲げ、給付範囲見直しなどで現役世代の負担減を模索
- 共産党は 患者負担の軽減を最優先し、「公費5000億円投入」も明言
- れいわ新選組は、医療人材の増員と積極財政で賃上げを目指す
- 参政党は、終末期医療の自己負担化と予防インセンティブで国民の意識改革
- NHK党は、高齢者の負担増と保険適用の縮小で保険料の抑制を狙う
- チームみらいは、テクノロジー活用とアウトカム評価で医療改革を
- 「医療」の切り口から日本の未来を考えてみよう
7月20日に投開票が行われる第27回参議院議員選挙。様々な争点があるが、中でも重要なテーマの一つが社会保険料だ。特に医療費は今後もさらなる増加が見込まれるため、OTC類似薬の保険適用外や延命措置の自己負担化、収入に応じて負担額を変える「応能負担」なども含めた自己負担増といった、公的保険でカバーする範囲の見直しや、医療費削減につながる仕組みづくりが大きなテーマになっている。各党の主張はどういったものなのか。選挙直前、医師でもある著者が、主要各党とユニークな方針を掲げる新興政党、それぞれの医療政策を読み解き比べた。
(アンター株式会社CEO、整形外科医 中山俊)
今回の選挙では、多くの政党が、医療従事者の賃金増のために、短期的にはその原資となる診療報酬を引き上げるべきだと主張。同時に現役世代の社会保険料負担の抑制も実現すべきだと掲げている。
医療費のおおよその財源内訳は約5割が保険料で、約4割が税金、残りの約1割が患者の窓口負担である。つまり医療従事者の賃金を増やす財源を確保するには、保険料や税金、患者負担のすべて、あるいはいずれかを増やす必要がある。
私は医師であり、経営者でもある。整形外科医として社会保険診療から収入を得る立場でもあり、同時に医師同士が知識や技術を共有し合うプラットフォームを運営する会社の創業者で、事業主として社員の社会保険料を負担している立場でもある。この両方の視点を生かしながら、なるべくフラットな視点からそれぞれの医療政策を読み解き、意図や狙いについて考察した。
財源と患者の負担から読み解く各党の方針
各政党が掲げる政策を細かく紹介する前に、大まかな傾向を整理した。「財源の手当て」と「患者の負担」という2つのポイントからチェックしてみると、各党の掲げる医療政策は、おおむね次の3つの方向性に集約できる。
①現行制度維持・バランス型(自民党、公明党、国民民主党)
国民皆保険の枠組みを守りつつ、診療報酬のプラス改定や予防・DXで効率化し、世代間や所得間の負担バランスを調整する現実路線
②公費投入・患者負担軽減型(立憲民主党、共産党、れいわ新選組)
税財源を厚く投じ、公立病院の支援や窓口での医療費の負担の引き下げを優先して、社会保障を拡充する路線
③効率化・応益負担型(日本維新の会、参政党、NHK党、チームみらい)
DX(デジタル・トランスフォーメーション)や無駄削減で医療費を引き締めつつ、応益負担(受診者が受ける利益に応じて自己負担を増減させる仕組み)を導入して、高所得層や軽症・終末期医療に手厚いサポートを求める改革派
主要政党とユニークな医療政策を掲げる新興政党、合わせて10の党の医療政策を整理した(写真:筆者作成)
なお、医療従事者の処遇改善については、賃上げに言及している政党と、待遇改善にとどまる政党があるが、全政党が共通して掲げるキーメッセージであることも押さえておきたい。
では、与党の自民党と公明党から見ていこう。
