
(山田 稔:ジャーナリスト)
膀胱がん発覚(ステージ4)から1年2カ月が過ぎた。当初は「余命1年」と言われたものだが、なんとかそれをクリアし、寝たきり生活からも解放されている。
この間、多くの方にご心配をいただいた。同時にさまざまな質問も受けた。その中で関心が高かったのが、副作用と治療費の問題だ。今回は治療費とがん保険の問題について振り返ってみる。がん患者にとってがん保険は必須なのかどうか、検証してみたい。
がん診断当日の「あまりにも劇的な展開」
2024年3月。長引く血尿と頻尿に耐えかね、23区近郊のクリニックを訪れた。すると、エコー検査を終えた医師の表情が固まった。
「膀胱に巨大な物体が映っています。紹介状を書きますから一日も早く大学病院に行って詳しく診てもらってください」
言い終わると医師は市内の3つの病院の名前を挙げた。自宅から最も近い大学病院あてに紹介状を書いてもらい、帰宅後、すぐに連絡した。最短で翌々日の予約が取れた。
診察当日、朝9時過ぎに病院を訪れた。泌尿器科の担当医師は40歳ぐらいで、必要なこと以外はしゃべらない寡黙なタイプだ。
問診を終えて血液検査に向かうよう指示された。地下の検査場で7本分の採血を行い、CT撮影を済ませ心電図を取ってから再び泌尿器科へ。検査結果が出るまでの間、尿道口から内視鏡を送り込んで膀胱を撮影してチェック。狭い所を通していくので何とも言えない苦痛が襲う。やがて血液検査の結果も上がってきた。
「進行性の膀胱がんですね。膀胱内にかなり大きな腫瘍があります。残念ですが肺とリンパ節に転移がみられます。それと膀胱から腎臓に尿が逆流して、左右ともに水腎が認められます。ヘモグロビンの数値も低い。立ちくらみがしたでしょう。このあと輸血をして直ちに入院しましょう」
あまりにも劇的な展開に言葉が出てこない。ようやく捻りだしたのが「予後はどうですか」だった。