――たとえば寝たきりで介護を受けている方や認知症が進行している方の中には、かゆみの訴えが伝わらなかったり、婦人科への受診にいたらないこともありそうですね。
渡利 統計の数字よりも、実際にはもっと多くの人が罹患している可能性も考えられますね。介護に当たる方々も症状に気付かれたら、婦人科の受診を勧めてくださるとありがたいと思います。
――アルミノックス治療がそうした患者さんのかゆみや痛みを和らげることができたら、QOLの改善は見込めるでしょうか。
渡利 下着で擦れる、お小水がしみる、座ることもままならないといった痛みも患者さんからは聞きます。鎮痛剤でコントロールできない場合なども含めて、少しでも快適な生活にできるのであれば、意味のある治療になるのではないかと考えています。
HPVワクチンが防ぐのは子宮頸がんだけではない
――ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種によって、子宮頸がんを防ぐことができることがようやく理解されるようになってきました。
渡利 スコットランドでは13歳までにHPVワクチンを接種した人たちが、25歳になって子宮頸がん検診を受けたところ、発症例がゼロだったというデータが2024年に示されました。
日本では2013年に国が接種の積極的な呼びかけを中止したことで立ち後れてしまいましたが、接種の機会を逸してしまった人に公費(無料)で受けてもらう「キャッチアップ接種」*4の期間が2026年3月31日まで延長されたので、ぜひ接種していただきたいです。
じつは外陰がんと腟がんの多くにもHPVが関わっていて、他にも中咽頭がんや肛門がん、陰茎がんもワクチン接種が普及すればかなり減ると考えられています。そうなれば嬉しいかぎりですし、わざわざ治療や薬の開発にお金をかける必要もありません。私が生きている間に発症例ゼロまでは実現できないでしょうが、それが究極的にはいいのです。
*4 対象となるのはキャッチアップ接種対象者のうち、2022年4月1日~25年3月31日までにHPVワクチンを1回以上接種した人、2008(平成20)年度生まれの女性で22年4月1日~25年3月31日までにHPVワクチンを1回以上接種した人。期間は、キャッチアップ接種期間(25年3月31日まで)の終了後、1年間。(2025年1月8日現在)
厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」
*「アルミノックス治療(光免疫療法)」は、日本国内で承認されているのは一部の頭頚部がんのみで、実施できるのは施設・医師要件を満たした医療機関のみ。公的医療保険が適用され、高額療養費制度の対象になる。自由診療で「光免疫療法」を標榜する施設やウェブサイトには注意されたい。