局所再発が多く、治療の選択肢が少ない外陰がんと腟がん
――なぜ婦人科領域のがんにアルミノックス治療を使うことを考えられたのでしょうか。
渡利英道氏(以下、渡利) 希少がんの外陰がんと腟がんは、最初に発生した場所やその近くで再び発生する局所再発を繰り返すことがあるがんです。治療の第一選択は手術ですが、手術を繰り返しても完全に治癒しないケースを少なからず目の当たりにしてきました。高齢者に多いがんなので、体力や持病によって手術や抗がん剤による治療が厳しいこともあります。
そうなると、現状では放射線治療しか選択肢がありません。治療効果がなければ痛みを取ることもできず、外陰部が壊死を起こすこともあるなど非常につらい状態になった方もおられました。こうした患者さんたちに何か提供できる治療はないものかと思っていたのです。
アルミノックス治療が保険適用となった頭頸部がんは、大部分が扁平上皮がんでEGFR陽性が90%以上とされています。外陰、腟、子宮頸がんも扁平上皮がんが多く、その50~85%程度がEGFR陽性なので、婦人科領域にも応用できるのではないかと考えました。
この治療だけで治癒するという完全奏効が目標ですが、痛みや出血、分泌物の軽減ができるだけでも大きな意味があると思います。
――デリケートな場所でもあり、「治すためにしっかり切除すればいい」では済まないのでは、と感じます。
渡利 おっしゃる通りで、「治すためにはしっかり切除を」というのは医療側の発想でしょう。何度も手術を繰り返すのは心身に大きな苦痛を与えますし、繰り返すほど「また再発するのかも」という不安も大きくなります。
またがん治療では大きめに切除することが鉄則ですが、重要な臓器が隣接している場所なので、最大では骨盤除臓術といって下部結腸、直腸、膀胱、子宮、腟、卵巣などの摘出となり、人工肛門、人工尿路(ストーマ)が必要になります。それで長期生存できればいいという考え方もあるでしょうが、QOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)の低下は否めません。
そうした中、アルミノックス治療はすでに用いられている治療法ですから今すぐ提供可能ですし、かつ高齢者に負担の少ない治療法として可能性があると考えました。
――昨年(2024年)10月から治験を開始されました。
渡利 基本的には北海道内の患者さんに治験へ参加していただきたいと考えていますが、リクルートに苦戦しています。お問合せはいただくのですが、安全性を期すために適格基準を厳しくしていることに加えて、やはり希少がんなので人数そのものが少ないこともあります。再発子宮頸がんの患者さんにも参加をお願いしております*3。
*3 「局所進行・再発外陰癌・腟癌・子宮頸癌に対するASP-1929を用いた光免疫療法の安全性・有効性を評価する単群・非盲検第II相試験」