AMDの主力製品「Ryzen」(8月19日撮影、写真:ロイター/アフロ)

衝撃的なOpenAIとAMDの契約

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 2025年10月、米OpenAIがAMDと結んだ大規模なAIチップ供給契約は、業界にとって大きな転換点になりました。

 中でも注目すべきは、OpenAIがAMDの株式を最大1割取得できるワラント(新株予約権)を手にしたことです。

 これは単なる調達契約でもなければ、金融投資でもありません。私の目には、AI時代における資源の主導権をめぐる一つの外交戦として映りました。

 AIモデルの価値は性能だけではなく、その背後にある膨大な計算資源で決まるのです。どれだけ優れた研究者がいても、GPU(Graphics Processing Unit=画像処理装置)が足りなければモデルは育ちません。

 そして今、世界中のAI企業がGPU不足に苦しみ、まるで戦時下の物資争奪のような状況が生まれています。

 OpenAIがAMDの株式取得権を持つことになった背景には、こうした世界的なAI資源飢餓があるでしょう。

 ここでは、今回の契約を構成する重要なポイントを3つの観点から整理してみたいと思います。

 1つ目が、GPUは「ソフトウエアのための資源」ではなく「国家間で取り合う戦略物資」になった点です。

 AIの計算量は毎年のように跳ね上がり、OpenAIの「GPT」シリーズを見ても、モデルの次元が上がるたびに必要なGPU数は倍増しています。

「ChatGPT」に使われるGPUクラスタは、すでに数十万枚規模に達したと言われています。その需要に対し、供給は全く追いついていません。

 かつて日本企業は、IT投資の文脈でAIを捉えていました。つまり、社内システムと同じように必要になったら買うという姿勢です。

 しかし、今の世界は全く違います。

 GPUはもはや必要だから買うのではなく、持っていなければ戦えないものになりました。

 NVIDIAのGPU「H100」には予約が殺到し、手に入るのは1年先という状況も当たり前になっています。GPUが手に入るかどうかで、経営戦略が左右される時代です。

 OpenAIがAMD株の最大1割に相当するワラントを得たのは、
 AI企業がついに資源の確保を目的に資本市場へ踏み込んできたことを示しています。