半導体メーカーを囲い込め
2つ目が、OpenAIは「半導体メーカーの経営への影響力」を得ることで資源確保を恒久化しようとしているという点です。
最大1割という数字は象徴的です。
10%は、企業の支配権を握るほどではありませんが、戦略議論の場では無視できない存在です。
AMDから見れば、OpenAIはもはや単なる顧客ではなく準ステークホルダーになります。この関係性の変化こそが、今回の契約の核心です。
OpenAIは、ただGPUを確保するのではなく、GPUの未来の生産計画に影響を与えられるポジションを求めました。
この動きは極めて合理的です。
需要が膨れ上がる一方で供給が細る状況では「購入量を増やす」「長期契約を結ぶ」といった手段だけでは安定供給を保証できません。
最も確実なのは供給企業の意思決定に入り込むことです。 今回のワラントはまさにそのための切符になります。
3つ目が1割という構造の裏にあるOpenAIの本当の狙いです。
最大1割の株式取得権には3つの重層的な目的があります。第1に、供給網の優先順位を引き上げること。
AMDが新しい製造計画を立てるとき、OpenAIは最優先顧客として扱われる可能性が高くなります。
第2に、AMDの株価上昇の恩恵を受けること。
GPU需要は今後も指数関数的に増える可能性が高いため、AMDの長期的価値が上がると見込んでいるわけです。OpenAIは事業パートナーを、投資対象としても評価していることになります。
第3に、将来的な自社インフラ戦略の自由度を高めること。
AMDとの緊密な関係が、独自GPUアーキテクチャの共同開発につながる可能性があります。
AI企業が半導体の設計段階に入り込む流れは、今後さらに強まるでしょう。OpenAIがこの契約で手にしたのは、ただの権利ではなくAI産業の根源である計算資源を自らの統治圏に組み込むための足場固めです。
筆者作成