AIインフラは2大ブロック化へ

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 前回は、生成AIの爆発的な発展がAI半導体の地勢図を一気に塗り替えられる可能性、つまり米OpenAIとNVIDIAが率いるGPU陣営と、グーグルとメタ(Meta)が結びついたTPU陣営という2大ブロックが形成されつつある背景を述べました。

 今回は、この対立がどのように未来の産業構造を決定づけるのか、そして日本企業に求められる選択について掘り下げていきたいと思います。

 分かりやすく説明するために、前回と重なる部分がありますが、必要に応じて適宜読み飛ばしていただければ幸いです。

 IT業界に長く身を置いている私は、インフラの選択一つで企業の成長速度が大きく変わる場面を何度も目にしてきました。

 しかし、今回のAI半導体の選択はその比ではない気がします。やや大袈裟ですが、企業の未来の文明選択に近いテーマとも言えるでしょう。

 GPU(Graphics Processing Unit=画像処理装置)とTPU(Tensor Processing Unit=深層学習用の行列計算に特化したプロセッサー)の違いは単純な性能比較ではなく、AI哲学の選択といっても過言ではない。

 GPUは本来ゲームグラフィックスのために誕生しましたが、仮想通貨のマイニングに使われたり、AIの深層学習に使われたりと、本来の目的以外の分野で注目されるようになりました。

 行列計算に適した構造が深層学習と完璧にマッチし、結果としてAI革命の主役になりました。

 今ではNVIDIAの「H100」や「B100」は、世界のAI研究者にとって筆記用具のような存在になりました。

 また、NVIDIAが開発したGPUの並列処理能力を活かすためのプラットフォームおよびプログラミングモデル「CUDA」は、ソフト開発を根底から支えています。

 GPUの本質的な強みは柔軟性です。どんなモデルにも対応でき、あらゆる業界がGPUを前提にAIを組んでいます。

 OpenAI、マイクロソフト、テスラ、アマゾン・ドット・コム、さらには日本企業もほぼGPUを前提にAI戦略を組み立てています。

 AI市場の自由競争はGPUなしでは成立しません。