Przemysław TrojanによるPixabayからの画像
AIが道具から労働力へと変わった
米OpenAIのサム・アルトマンCEO(最高経営責任者)がコードレッドを発令したという出来事は、技術者たちだけが慌てふためく話ではありません。
これは経営者にとって、沈みかけた船の上でようやく鳴らされた警笛のようなものです。
AIが「道具」から「労働力」へと変貌する転換点を、世界のど真ん中で象徴した一日でした。
長くITの世界に身を置いてきた私も、このような速度で産業構造そのものが動き出した瞬間を目の当たりにするのは初めてです。
今は世界中の企業がAIを核にして企業を再設計し始めています。そしてその波は、日本にも確実に到達するでしょう。
ここからは、経営者の視点でコードレッドの本質を紐解いていきたいと思います。少し熱を帯びた内容になるかもしれませんが、ご容赦ください。こういう局面では、どうしても筆が走ってしまうものです。
AIは雇われない従業員になるという現実が迫っています。
多くの企業では、AIは効率化のためのツール、もしくはDX(デジタルトランスフォーメーション)の延長上で活用する存在として扱われがちでした。
ところが2024年以降、OpenAIの生成AI「ChatGPT」とグーグルの「Gemini」の競争が激化し、AIが事務処理、文章生成、翻訳、分析、プログラミングなど、知的労働の広範囲を人間同等かそれ以上の能力でこなすようになったのです。
マイクロソフトが自社の営業部門に「Copilot」を全面導入してから受注率が上がったという報告や、セールスフォースがAIエージェントによる顧客分析を強化した例などを見ると、もはや一部の先進企業だけの話ではありません。
これらのAIは、体こそありませんが、明らかに人的労働の代替として機能し始めています。
しかも、休まない、迷わない、24時間働くという、とんでもないタフネスを持つ従業員です。