出所:AdobeStock出所:AdobeStock

 組織の不正会計はなぜ長期間にわたって見過ごされてしまうのか──。不適切会計の疑いで第三者委員会の調査が進むモーター大手・ニデック(旧日本電産)をはじめ、会計にまつわる企業不祥事は後を絶たない。こうした不祥事について「問題の本質は会計処理だけでなく、組織そのものにある」と語るのは、2025年11月に書籍『不正会計と経営管理』(ふくろう出版)を出版した県立広島大学大学院経営管理研究科教授の安達巧氏だ。不正会計が行われる組織構造や不正を外部から見抜けない理由について、同氏に聞いた。

不正会計は「数字の問題」ではなく「信頼の問題」

──著書『不正会計と経営管理』では、不正会計が企業経営に与える影響や、管理・監査の責任について解説しています。不正会計は企業や社会に対して、どのような影響を及ぼし得るのでしょうか。

安達巧氏(以下敬称略) 不正会計は株式市場に対して短期的、長期的に深刻な影響を及ぼします。まず、短期的には株価の急落が避けられません。企業の信頼性が損なわれることで投資家がリスク回避行動を取り、売りが集中します。

 例えば、2011年に発覚したオリンパス事件では、同社の巨額の損失隠しが報じられると株価が数日で半値以下に急落しました。海外では、2001年に発覚したエンロン事件がその典型です。破綻に至る過程で株価はゼロに近づき、投資家に甚大な損失を与えました。

 長期的な影響としては、資本市場全体の信頼性低下が挙げられます。一社の不正によって市場全体が「ガバナンス不全」という印象を持たれると、海外投資家の資金流入が減少し、結果として市場の流動性や評価が低下します。これは日本市場にとって構造的なリスクとなります。

 企業価値の毀損(きそん)が与える悪影響は、単なる株価下落にとどまりません。信用格付けの低下、資金調達コストの上昇、取引先や顧客の離反など、経営基盤そのものを揺るがします。こうした連鎖的な影響は株主だけでなく従業員も含めたステークホルダー全体に広がるのです。