サム・アルトマン氏(9月25日ベルリンで撮影、写真:picture alliance/アフロ)

OpenAIが抱いた強烈な危機感

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 2025年12月は、世界の経営者にとって後に振り返るべき節目になるかもしれません。

 米OpenAIのサム・アルトマンCEO(最高経営責任者)が社内で「コードレッド」を発令したというニュースが流れ、その瞬間から私たちが長年慣れ親しんできた技術競争の地図が、塗り替わり始めました。

 このニュースを無視することはできません。AIの進化は急速でしたが、今回の出来事は「速度」ではなく「質」が変わったことを示していたからです。

 まず、コードレッドという言葉の意味を丁寧に整理しておきたいと思います。

 米国の医療ドラマなどで有名になった表現で、火災発生を知らせる警報ですが、経営の場ではより戦略的で深刻な意味合いを持ちます。

 それは外部環境の変化が企業の存続に直結するとトップが判断し、組織の通常運転を停止して、経営資源を再配分する必要が生じたときに発令される最高度の警告です。

 競争が激しくなったとか、ライバルが新製品を出したという程度では発動されません。

 市場のルールが根元から書き換わり、自社の位置づけが失われる恐れがあるときだけ、CEOはこの言葉を口にします。

 だからこそ、普段は攻め続ける側にいるOpenAIがコードレッドを宣言したことには、誰もが無視できない異常性があったのです。

 引き金となったのは、グーグルが2025年11月に発表した生成AI「Gemini 3」でした。

 このモデルは単なる性能向上にとどまらず、検索という20年以上インターネットの中心にあった概念そのものを再設計したのです。