出所:共同通信イメージズ出所:共同通信イメージズ

 人気ゲームシリーズとのコラボ商品「レゴ スーパーマリオ」や「レゴ どうぶつの森」、ナイキの名作を再現した「レゴ Nike Slam Dunk」――。次々と新商品が登場するレゴブロックは、子どもにとどまらず世界中の大人を熱中させている。ファンを巻き込む同社の仕組みについて「自社の『潜在的な資源』をビジネスモデルにうまく活用している」と語るのは、2025年9月に著書『価値共創のナラティブ』(同文舘出版)を出版した明治大学名誉教授の井上崇通氏だ。レゴ社が数多くのヒット商品を生み出せる理由、ビジネスの常識を塗り替える「共創」の取り組みについて、同氏に聞いた。

「顧客との資源統合」で共創を実現

──著書『価値共創のナラティブ』では、企業がマーケティングを行う上で「一方的な価値提供」ではなく「顧客との相互作用による価値提供」が必要と述べています。具体的にどのようなことを指すのでしょうか。

井上崇通氏(以下敬称略) 従来のマーケティングは、企業が一方的に価値を提供するモデルでした。例えば、プロのシェフ(企業)が得意な料理を作り、顧客のテーブルに運ぶ「高級レストラン」のようなイメージです。

 それに対して、相互作用を取り入れた共創型のモデルは「バーベキュー場」のようなものです。企業は場所や道具を提供し、ある顧客は食材を持参し、別の顧客は調理の腕をふるい、参加者同士で価値を生み出していきます。このような仕組みを「資源統合(resource integration)」と呼びます。

 この資源統合をビジネスに取り入れて成功したのが、民泊仲介サービスを展開する米エアビーアンドビーです。一般的に宿泊業では、事業者が土地を取得してホテルを建設し、スタッフを雇ってサービスを提供する、という大きな投資が必要になります。

 しかし、エアビーアンドビーは宿泊施設を一切保有せず、空き部屋を貸したい人と宿泊したい人をマッチングするプラットフォームを提供しました。資源そのものを持たず、両者のリソースを統合することで新たな価値を創出しているのです。

 もう一つの分かりやすい事例は、米アマゾンです。同社は自社で商品を販売するだけでなく、自社が持つ物流ネットワークや顧客基盤といった資源を外部事業者にも開放する「マーケットプレイス」を展開しています。

 このマーケットプレイスという商店街のような仕組みを通じて、他社の商品も含めた幅広い品ぞろえを実現しています。本来であれば競合となるサードパーティの事業者と協業することで、「地球上で最も豊富な品ぞろえ」という価値をユーザーに提供しているのです。