OTC類似薬を公的医療保険の対象から外すべきかどうかが話題になっている(写真:takasu/イメージマート)
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湿布薬や風邪薬など、「OTC類似薬」を公的医療保険の対象から外す(保険適用除外)べきかどうかが大きな話題になっている。議論の発端は、2025年2月に日本維新の会が提示した「社会保険料を下げる改革案」だった。同案では現役世代の社会保険料負担を軽減する具体策の一つとして、OTC類似薬を保険適用から外すことが提案された。市販薬を活用したセルフメディケーション(自己ケア)の推進によって、年間約1兆円の医療費削減につながると試算。こうした提案を受け、政府・与党も2025年末までに十分な検討を行い、2026年度から早期に実現可能なものから段階的に実施する方針を掲げている。そこで改めて、OTC類似薬の保険適用除外を巡る議論と、その可否について整理した。

(アンター株式会社CEO、整形外科医 中山俊)

医師の間でも意見が分かれるOTC類似薬の保険適用除外

 OTC類似薬の保険適用除外を巡る動きに対して、医療現場からはさまざまな声が上がっている。

医師の処方箋が必要な医療用医薬品だが、市販薬(OTC医薬品)と成分や効果が似ている薬。OTCは「Over The Counter」の略で、薬局やドラッグストアのカウンター越しに販売されることからこのように言われる

 日経新聞と日経メディカルオンラインが2025年に実施した医師向けの共同調査アンケートによると、勤務医の約7割が「OTC類似薬の保険適用除外」に賛成と回答した一方、開業医では賛否が拮抗。OTC類似薬の保険適用除外に対して慎重な意見がやや上回る結果となった。医療費の適正化には一定の理解があるものの、立場や診療環境によって、医師の間でも、受け止め方が異なるようだ。

 勤務医の間では、OTC類似薬の処方が減ることで外来業務が軽減され、時間外労働の抑制につながることを歓迎する声がある。これは近年進む、医師の働き方改革の流れとも一致しているだろう。

 一方、開業医にとっては、軽症患者の受診が減れば経営への影響は避けられない。そのため、OTC類似薬の保険適用除外に対しては慎重な姿勢が強くなったようだ。

 日本医師会も、この議論に対しては一貫して慎重な立場を取っており、「患者が自己判断で市販薬に頼ることで受診控えが起き、重大な病気の見逃しや重症化につながる恐れがある」と指摘。加えて、経済的に困窮している人ほど負担が増え、健康格差が広がる可能性もあるとして、制度の見直しには慎重な議論とバランスの取れた対応が必要だと強調している。

 こうした医療現場の声や立場の違いを踏まえながら、なぜ今、OTC類似薬の保険適用除外が議論されているのか、改めてその背景と、今後の課題を整理していこう。