
一般社団法人「ペットフード協会」が12月20日に発表した2024年の全国犬猫飼育実態調査*1によれば、ネコの平均寿命は15.92歳、外に出さないネコでは16.34歳で14年前と比べると、1.56歳長生きになったという。
腎臓病は猫の「宿命」
先日、筆者の飼い猫クロベが20歳でこの世を去った。22年初頭に腎臓の数値悪化を指摘されてから治療を重ねて、人間でいえば100歳に近い猫生を閉じたのだから大往生と言えるのかもしれない。しかし、てんかん発作や消化器系のトラブルが増え、だんだん歩行やトイレが困難になり1カ月に及んだ寝たきり生活は、老衰と納得しなければならないのだろうか。もし、ネコ科の宿命である慢性腎不全が治療できれば、あのように苦しまなくても済んだだろうか。
タンパク質AIMによる画期的な治療薬の開発を進める一般社団法人AIM医学研究所の宮﨑徹所長によれば、ネコ薬は25年春頃に臨床試験(治験)を開始する見込みだという。そして、人間に対する研究成果も積み上がっている。これまで腎臓病、脳梗塞、腹膜炎、肝臓がん、肥満や脂肪肝、腎結石、高眼圧症などのさまざまな病気がAIMによって予防・改善・治療できることが宮﨑所長とチームによって証明されてきた。AIMによるネコ薬と人間の疾患薬研究の最前線について、宮﨑所長に話を聞いた。
まず、AIMについておさらいしておきたい。
AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)は宮﨑所長が発見し、1999年に論文発表した血中タンパク質で、体内のさまざまなゴミに貼りつき「これはゴミです、掃除して」という目印、例えて言えば粗大ごみに貼るシールのようなものだ。この“ゴミ”とは、腎臓の組織中の老廃物や壊れたタンパク質、肝臓や脂肪組織中の過剰な脂肪、脳梗塞によって傷ついた神経細胞やその死骸、がん細胞、アルツハイマー型認知症の原因になるアミロイドβなどだ。そうしたゴミが掃除されずにたまってしまうと、それぞれの臓器は傷つけられ徐々に破壊されていく。
これらのゴミにAIMが貼り付くことで、マクロファージなどの貪食細胞が清掃の役割をして、ゴミを掃除してくれる。このようにしてAIMが働いていれば、体内では日々ゴミ掃除が行われ、ある程度までは腎不全など深刻な病気にならないようにしてくれているのだ。
AIMは、普段はIgM(免疫グロブリンM)五量体という大きなタンパク質が台紙となってそれに貼りついている。体内でゴミが発生すると台紙(IgM)から外れ、ゴミに貼られる。ところがネコ科の動物は、先天的にAIMがIgMから外れにくくなっているため、腎臓にたまったゴミにはAIMというシールはゴミに貼られず、体内に溜まり続け、早い段階から腎臓を傷つけ、ほとんどすべてのネコで腎不全に至る。
しかし、台紙から外れたAIMを直接ネコに投与すると腎臓中のゴミは掃除され、腎臓病の悪化を止めることが宮﨑所長らの研究で明らかになった。