(宮沢 洋:BUNGA NET編集長、編集者、画文家)
筆者は2022年7月下旬に上梓する『イラストで読む建築 日本の水族館 五十三次』(青幻舎)の中で、全国53館の水族館をレポートした。
その中から、空間体験が特に素晴らしい6施設を2回に分けて紹介する。前編では「アイデアの勝利」といえる3館を取り上げた。
「こんな見せ方が!」見事な展示アイデアの水族館ベスト3
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70908
水族館巡りの後編は、「水と光に包まれる体験」ができる3施設を紹介する。水族館で「水と光に包まれる」は当たり前ではないか、と思われるかもしれない。いや、そんなことはない。
「水に包まれる」だけの感覚は昔からあったかもしれないが、筆者が子どもの頃に見た水族館はどこも海底のように暗かった。水槽からも通路からも光は入らなかった。しかし、さまざまな技術やスタッフたちの努力によって、「水と光に包まれる空間」が実現するようになってきたのである。
なぜ、光が入る水槽が難しいかというと、一番のネックは水槽内に藻が発生しやすいからなのだという。加えて、温度の管理が難しくなる、アクリル面に光が反射したり、逆光になったりして見にくくなる、水槽の上にガラス屋根を架ければ保守にお金がかかるし、屋根を架けなければ掃除が大変で外敵にも襲われる……といったマイナス面がごろごろあるため、かつての水族館の水槽は暗い室内に置かれていたのだ。
それを知ったうえで、お薦めの3施設を紹介しよう。
四国水族館
オーバーハング+うずしおでSNS映え
■四国水族館
香川県綾歌郡宇多津町浜一番丁4
2020年開館
設計:大成建設
交通:JR宇多津駅から徒歩約12分
https://shikoku-aquarium.jp/
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「四国水族館」は2020年、香川県宇多津町の「うたづ臨海公園」の一画に開館した新しい水族館だ。香川県内の企業などが出資する株式会社四国水族館開発が運営している。設計と施工は大成建設が担当した。
“SNS映え”すると話題になっているのが、1階の「渦潮の景」という水槽。鳴門のうずしおを水中観覧船からのぞいたイメージでオーバーハング水槽(上部がせり出した水槽)を設置。上から自然光が入るので、ファンタジックな写真が撮れる。