『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。先週は都知事選開票速報により放送が休止となった。そのため、今回は「今後の見どころ」について、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
控えめな彰子に一条天皇はどう接するのか?
「私には見えます。彰子(あきこ)様は朝廷のこの先を背負って立つお方だ」
6月30日の放送・第26回「いけにえの姫」では、ユースケ・サンタマリア演じる安倍晴明が、柄本佑演じる藤原道長にそう告げると、道長は「そのような娘ではない!」と激高。「引っ込み思案で、口数も少なく、何よりまだ子供だ」と言うも、晴明は「恐れながら、入内は彰子さまが背負われた宿命でございます」と言い切っている。
確かに事態は深刻だ。一条天皇は、出家した中宮の藤原定子(さだこ)に夢中になり、政務にすっかり身が入らなくなってしまった、というのがドラマでの設定だ。定子から一条天皇の気持ちを引き離すためには、自分の娘・彰子を入内させるほかないと、道長も覚悟を決める。
だが、そのあと登場した見上愛演じる藤原彰子は、視聴者の予想を超えるほどの暗い性格で、道長が何をいっても「仰せのままに……」というのみ。道長の言うように、とても朝廷を背負っていくようなタイプには見えなかった。
実際の彰子もおとなしかったらしい。紫式部は『紫式部日記』で彰子の性格について「あまりものづつみせさせ給へる御心」としている。「ものつづみ」とは「遠慮」や「抑制」という意味なので「あまりにも控えめな性格」というのが、彰子に対する式部の分析だった。
定子が聡明で明るい女性だったとされるだけに、一条天皇はタイプの違う彰子に戸惑うこととなる。平安後期の歴史物語である『栄花物語』によると、一条天皇が得意な笛を披露しても、彰子はそっぽを向いてしまったとか……。
ドラマでもそんなシーンが描かれることだろう。一条天皇が内気な彰子にどんな対応をするのか注目したい。