「JINS賞」にバブル建築のリノベ「ラビットホール」

 新設の「JINS賞」は、「みんなの建築大賞」協力者の田中仁氏(ジンズホールディングス創業者・代表取締役会長CEO)が、ノミネート10作品のなかから独自の視点で選ぶもの。田中氏はJINSの社屋や店舗づくりに次々と気鋭の建築家を起用してきた経営者だ。

「JINS賞」を受賞した岡山市の「ラビットホール」。バブル期の建物のリノベーションだ。建設当時の姿を残す外観にも、展示されたアートの気配がにじみ出る(写真:白井良邦)

 田中氏が選んだ「ラビットホール」は、1990年代に建てられた「ポストモダン」様式の建物をリノベーションした現代美術館。設計の青木淳氏は、20年ほど前にJINS前橋本社を手掛けている。以来ずっと青木氏の建築を見てきた田中氏は「そこに変わらぬ明確な思想を感じる」という。

「青木氏の建築は、開かれているのに奥が見えない、あるいはちょっとしたズレを感じさせる。そして、建築が主役にならない。建築の中で活動する人、中にあるものを生かす。合理と感性を両立する建築家だと感じるし、その姿勢はJINSが目指すものと一致する」(田中氏)

 これを受けて青木氏は「建物を閉じた世界とせず、いかに受け止めて使っていくかは、建築に残された新たな領域だ。その挑戦に着目し、評価してもらえたことが本当にありがたい」と応じた。

青木淳氏(左)と田中仁氏(写真:宮沢洋)

「ラビットホールはこれで完成ではなく、展示替えごとにアーティストと話し合い、つくったり壊したりしていく。われわれがデザインしたのは、変わり続けるための建物のありようだ。それが成功したかどうか、今この瞬間には分からないが、やがて建物がなくなってしまうことまで含んだプロジェクトだと考えている」(青木氏)

 美術館のオーナーは起業家が設立した石川文化振興財団で、今後も周囲の街中に多様な「アネックス」をつくっていく計画という。田中氏もまた、田中仁財団を通じて故郷の前橋市でまちづくりに取り組んでいる(その一環「白井屋ホテル」は前出の藤本壮介氏が手掛けた)。ここにも大きな共通項が見出された。