「特別賞」は解体の瀬戸際にある丹下建築の再生計画

「特別賞」の「旧香川県立体育館再生計画」は、その名の通り「計画」であって、完成したプロジェクトではない。よって「みんなの建築大賞2026」の投票対象にはならないが「建築の専門外の人々にも広く知ってもらいたいプロジェクトとして特別賞を授与した」と五十嵐委員長は説明する。

「旧香川県立体育館」は、巨匠・丹下健三が「国立代々木競技場」(重要文化財)と同時期に設計した建築だ。最初の東京オリンピックが開催された1964年に竣工し、そのユニークな形状から「船の体育館」と呼ばれて親しまれてきた。しかし2014年に閉館、香川県は民間による利活用の可能性を探ったが有効な提案が得られず、2023年に解体の方針を決定している。

旧香川県立体育館(写真:旧香川県立体育館再生委員会)

 香川県が予算に計上した解体費は約10億円。これを受けて「これほど大きな金額がかかるとは、この建築に力が残っていることを意味するのでは」と考えた建築家らが、民間団体「旧香川県立体育館再生委員会」を設立。再生計画をまとめて公表した。

 この再生計画のユニークな点は、行政に費用負担を求めず、民間が自ら買い取って改修し、事業化することにある。改修設計には建築再生技術「リファイニング建築」の提唱者で、豊富な実績を持つ建築家・青木茂氏が参画している。

 香川県はすでに事業者と解体工事契約を締結済みだが、記事執筆時点で着手には至っていない。再生委員会は解体を食い止めるための努力を継続中だ。この件については、別記事を立てて詳細をお伝えする予定だ。

旧香川県立体育館再生委員会委員長の長田慶太氏(右)と理事の青木茂氏(写真:宮沢洋)

 一般投票では「大阪・関西万博」旋風に席巻された感もある「みんなの建築大賞2026」。他方で、「JINS賞」ではバブル期に数多く建てられた「ポストモダン建築」の先駆的な活用事例を、「特別賞」では高度成長期の「モダニズム建築」の新たな再生手法を紹介した。結果として、2025年という年を象徴するラインナップになったのではないか。さて、今年2026年の建築は、どんな時代を表現することになるのだろうか。