各界の読書家が「いま読むべき1冊」を紹介する書評コーナー『Hon Zuki !』。ノンフィクションを中心に「必読」の書を紹介します。
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 夢のある物語だ。しかし、これは決してSFではない。なにしろ、それに向けた研究を始めている人たちがたくさんいるのだから。一方で、ヒトはすでに宇宙に住んでいると言えなくもない。

 国際宇宙ステーション(ISS)は、1998年に最初のモジュールが打ち上げられ、ヒトが「住む」ようになってからすでに25年以上がたっているし、約340日という最長滞在記録もある。

 けれどもこれは、宇宙とはいえ、地球の重力圏内、高度約400kmの「宇宙」だ。地球から最も近い天体である月となると、話は相当に違ってくる。近いとはいえ、その距離38万キロ、ISSに比べるとはるか彼方である。

宇宙にヒトは住めるのか』(林公代著、ちくまプリマー新書)

 ご存じニール・アームストロング船長が月に足跡を残したアポロ11号は1969年のことで、月面滞在は1日にも満たなかった。

 以後、故障のため月面に到達できなかったアポロ13号を除いて、アポロ17号までの間に月に降り立ったのはわずか12人。延べで約25人・日でしかない。最後に月面に立ったのが1972年だから、もう半世紀以上も前のことだ。

 現在はアルテミス計画が進行中で、今年にはアルテミス2号が月周回軌道へヒトを運び、アルテミス3号による有人月面着陸も計画されている。とはいえ、かように月は遠いのだ。

 宇宙——より正確には地球以外の天体——にヒトが住むとなると、当面は月しかないだろう。2026年までに火星に到達できると豪語していたイーロン・マスクも大きくトーンダウンし、月面における「自律的に拡張していく都市」に目的を移したことが最近報じられた。

 その目的でさえ大言壮語な気がしてしまうのだが、この本を読むと、ずいぶんと印象が違ってくる。なにしろ、すでに、日本のあちこちで、それを目指した研究が真剣におこなわれているのである。