宇宙で快適に暮らすには?

「食」の次の章は「宇宙で快適に暮らすために」で「住」、すなわち建築物のことが紹介されていく。建築資材を運ぶだけでも大変だが、月面には放射線だけでなく、隕石もたくさん降ってくる。少人数なだけに、プライバシーや音もれにも配慮が必要だ。それに、重機もないのにどのようにして建築するのか。

 問題は山積みだが、スーパーゼネコンのひとつである竹中工務店の宇宙建築タスクフォース(TSX)は、そのあたりを考慮して、すでに2~4人のベースキャンプから100人規模の大建築物までのプランを作成している。

 昨年の12月に「宇宙のくらしをつくる建築展|Lunar Architecture by TAKENAKA」が開かれたので見学にいった。あまりに本気なので、模型の前で説明するTSXの人たちの熱気に驚かされた。

 月に「社会」ができた時にはシンボルとして高さ150mのルナタワーを建築する計画まであって、そのプランは第9回宇宙建築賞を受賞している。これらについてはTSXのウェブサイトがあるので、興味のある方はぜひ覗いてみてほしい(リンクはこちら)。

月生まれの子孫のための人工重力居住施設

 第3章は「衣」かと思えば、そうではなかった。食・住に比べて重要性が低くはないが、地球から持って行くしかないからだろう。かわって取り上げられるのは「生」、といっていいだろうか、「宇宙に行くとどうなる?」という章立てで宇宙医学がテーマになっている。

 これまでの宇宙飛行士たちの経験から、さまざまなことがわかってきた。意外でもあり、当たり前でもあるのは、ヒトは重力環境下で進化してきたということだ。

 以前、向井千秋さんの講演を聴いた時にいちばん印象に残っているのは、地球に戻ってきて一日くらいの間だけは、名刺の重さがわかる、ということだった。かくも我々は無意識のうちに、重力環境に慣れきっているのである。逆に言うと、長期間にわたって月の重力程度のところで生きていくのはきわめて難しい可能性が高い。

 ある場所で世代をつなぐことができたとき、そこが人類にとっての真のフロンティアとなる。月に限らず、「定住」となると最大のハードルは出産・妊娠である。

 そんなに遠い未来のことまでという気もするが、「安心して赤ちゃんを産み、育て、月で生まれた第二世代、第三世代がいつでも地球で元気で歩けるカラダを維持する」ことまで考えられている。そのために必要だからと、人工重力居住施設「ルナグラス」も提案されている。

 こちらは同じくスーパーゼネコンである鹿島建設からの提案で、幅557メートル、高さ530メートル、1分間に3回転させることにより重力を発生させる建築物だ。1万人を収容できるというからすごい。

 段階的な建築プランや、さらに発展させた火星用の「マーズグラス」まで提案されているのには、驚嘆するというか、ちょいと呆れてしまうというか……。そういったことが書かれているのが第4章「もっと長く、もっと遠くへ」だ。