「失われた30年」を経て蘇る日本企業
評者(黒田)が社会人となった頃、日本企業は世界市場で圧倒的な存在感を放っていた。プラザ合意後の急激な円高という逆風をものともせず、むしろ強い円を武器に、ソニーはコロンビア・ピクチャーズを、三菱地所はロックフェラー・センターを買収した時代である。
そのころ、入学するのも卒業するのも困難であるハーバード・ビジネススクールに評者が入学し卒業することができたのも、ひとえに、評者が当時ソニーに勤めていたからだと思っている。世界中の人々がいわゆる日本的経営について学びたがっていた。
しかし、卒業すると同時にバブルは崩壊し、日本は「失われた10年」に突入した。それは20年となり30年となり、低迷が永続するのではないかという諦念すら漂っていた。
だが、「失われた40年」にはならなかった。そんな折、日本企業の復活を読み解く書として2025年に刊行されたのが、本書『Resolute Japan(レゾリュート・ジャパン)』(日本語訳は『ジャパン・ウェイ 静かなる改革者たち』。評者が読んだのは原書の方であり、この書評も原書に基づいて書かれている)。
“Resolute”とは、目的に対して揺るぎない意志を貫く姿勢を意味する。これまでの、自信を喪失し漂流していた日本企業のイメージとは対極にある様相だ。
著者である早稲田大学の池上重輔氏、ペンシルベニア大学ウォートン校のハビール・シン氏、並びにマイケル・ユシーム氏の3名は、100名以上のCEO・幹部へのインタビューを通じ、日本企業の復活を支える新しいリーダーシップモデルを提示している。
本書は、外国人ビジネスリーダーが日本企業から学ぶことを意図して書かれたものだ。
取り上げる企業事例は、日立、無印良品、旭化成、ソニー、NTT、ローソンなど数多いが、いずれも日本ではよく知られた経営改革やCEOのストーリーであり、日本人にとって新鮮味は少ないかもしれない。
ただし、いまだにResoluteな姿へ変革しきれていない日本企業も少なくない。
近年、そうした企業を「JTC(Japanese Traditional Company)」と揶揄(やゆ)することが増えたが、本書ではRJ(Resolute Japan)に対置して「TJ(Traditional Japan)」と呼んでいる。
TJ企業の経営者が本書を読めば、自社の変革の遅れに対する危機感が大 いに刺激されるだろう。
日本語版も出版されるとよいのにと思っていたら、著者の池上さんから、同じように考える出版社がいて、日本経済新聞出版から日本語版が発刊されたのだということを教えてもらった。日本語版には、まさに日本企業向けの章も付け加えられているそうである。




