多極的視点から捉える日本企業
一般的に、日本企業の姿を論じる際、西洋——特に米国——との比較が中心になることが多い。しかし本書は、西洋・インド・中国・日本という「多極的比較」を行っており、これが非常に興味深い。
それぞれの特徴は次の通り整理されている。
・中国企業:不確実性を受け入れる姿勢。経験から学び、ビジネスチャンスを活かすことへの危機感。行動に焦点を当てた自信と楽観主義。会社のパーパスと使命に対して、忍耐強く、粘り強く、情熱を持つ。
・インド企業:人は削減すべきコストではなく、育成すべき資産である。変動の激しい環境では、繰り返し現れる障害を直感と機転で乗り越える。顧客ニーズに極めて効率的かつ倹約的なイノベーションで応える。家族の繁栄、地域の発展、国家の再生に誇りを持つ。
・RJ企業:長期(15年)目標のためにリードする。マルチステークホルダーの視点を持ち、投資家、顧客、従業員、コミュニティに対してプラスサムのアプローチをとる。新しいビジネスモデルの探求によって変動に対応する。強い権力者という概念を超え、親しみやすく、感動を与えるリーダーを目指す。
・米国企業:株主を優先。パートナーシップ、エコシステム投資、買収など多様な形態で新規事業を創出する能力を構築する。市場主導型の戦略で、外部視点から計画を立てる。労働市場と企業内成長機会の両方を通じたタレント開発。オーガニックおよび非オーガニック成長の両面からビジネスポートフォリオを積極的に管理する。
評者個人としては、インド企業の「難局を直観と機転で切り抜ける」姿勢に惹かれる。それができる経営者は何とも魅力的だ。
また本書は、RJとインド的経営には共通点があると指摘するのが意外だった。日本人がインドを訪れると、あまりの違いに強烈なカルチャーショックを受けるものだが、両者のリーダーは組織を有機的に捉え、企業文化と従業員への投資を惜しまない点で重なるというのだ。さらに、長期的使命を重視し、国家や地域社会への貢献を怠らない点も共通している。インド的経営についてもっと学びたくなる視点である。