「月産月消」を実現するには?

 第1章「宇宙でも美味しく食べたい!」の「食」からいこう。すべてを地球から運ぶなどというのは非現実的である。なんでも、キログラムあたり1億~2億円もかかるらしい。

 米5キロで、5億~10億円+4000円くらいになる。なので「月産月消」しかありえない。家畜の飼育は不可能だろうから、植物を栽培するしかない。そのためには何が必要で、どうすればいいのか。とても夢のある思考実験なので、少し考えを巡らせてから読み進めてほしい。

 絶対に必要なのは、水、肥料、空気、光である。土は必ずしもそうではなくて、水耕栽培も可能である。もうひとつ、野菜の種類を厳選する必要がある。単位面積あたりの収量が大きくて、手間のかからないものが望ましい。栄養としてはエネルギーだけでなく、ビタミンも欲しい。

 こういった「月面農場のコンセプト」はJAXAなどで長い間検討されてきて、月面農場ワーキンググループによって最終的に8種類が選ばれている。定年してから家庭菜園に精を出しているので、絶対に入りそうなものを考えて5種類は当てることができた。はずした3つは、イチゴ、レタス、サツマイモだった。さて、残りの5種類はなんでしょう?

 千葉大学には、なんとその名も「宇宙園芸研究センター」なるものがあって、宇宙における野菜作りが研究されている。なんか、SFっぽくってむっちゃええ名前。

 そこでは、リコピンなどを多くつくる品種をゲノム編集によって矮性化したトマトが月面栽培用として育てられている。それも「閉鎖型植物生産研究施設」といった環境、またの名を「月面農場」で。

 日照時間、ではなくて「LED照時間」をどうするかとか、温度をどうするかといったことは調べられるが、地球の6分の1の重力でどうなるかは難しい。空気も貴重なので、気圧をどこまで下げられるか、水をどう循環させるか、なども検討されている。

「内閣府宇宙開発利用加速化戦略プログラム」——別名、スターダストプログラム——では、月面の長期献立メニュー開発や食のサポートシステムなど「食の支援ソリューション」についても検討が始められている。

 そこではすでに、8種類の野菜と既存の宇宙食を組み合わせて、簡単に作れる4週間分のメニューまで作られている。いくらなんでも気が早すぎるんちゃうんかと思わん訳ではないけど、「今夜はお月見ならぬ地球見パーティー」とかいうメニューまであって、地球見だんごや餅つきまで予定されているというのはおもろすぎる。

「宇宙と地上の課題は共通」していて、「月を目指す技術開発の過程で得られた技術や知見は、月だけでなく、地球上の様々な分野で生かされるはず」だという。確かにそうだ、月を通して地球のことを考える。思考実験として、さらにもう一段面白い。