事業スキーム図。土地に定期借地権を設定し、県に賃料を支払うことも考えられる。資金は主に、融資と不動産ファンドからの出資で賄うことを想定する。後述のように、文化財に指定されれば国の支援を得られる可能性もある拡大画像表示
案②のように屋根に穴を開ける大胆な改修となると、今度は文化財としての価値が保たれるかどうかが問題になりそうだ。これについては、文化庁文化審議会文化経済部会建築文化ワーキンググループの座長で工学院大学総合研究所教授の後藤治氏が書簡を寄せている。そこには、この再生計画が実現するなら「建築文化振興のモデルとなる取り組みとなるものと考えられる。(中略)国の支援の対象とするよう強く働きかけていきたい」と書かれている。
2025年7月に最初の記者会見を開いて以来、再生委員会は多方面に取り組みを展開してきた。当初案が「具体的な主体や計画が明確でない」と県から却下された際にはすかさず追加資料を提出し、8月に2度目の会見を開催。その後、担当の県教育委員会との面談、建物が所在する高松市議会への陳情と、粘り強く働きかけを続けてきた。
他方では民意を確かめるため、ビラ配りとオンラインによる署名運動とクラウドファンディングを行っている。前者では3カ月で4万9247筆の署名を、後者では目標を超える475万4000円の支援を集めた。
建築の文化的・歴史的価値は「折り紙付き」だ。国際的評価も高く、丹下の資料をアーカイブするハーバード大学大学院やニューヨーク近代美術館からも、知事宛てに直接、解体再考を求める書簡が届いている。
それでも解体への歩みを止めない県に対し、再生委員会は2025年9月、住民監査請求に踏み切る。解体費用支出の適正性について、県に検証を求める内容だった。しかしこれも11月に棄却され、同月に県議会において解体工事契約が議決された。
県は解体を急ぐ理由に安全性を挙げている。「南海トラフなどの巨大地震時に倒壊するおそれがある」というのだ。しかし、その根拠となる耐震診断は、閉館前の2012年に行ったきり。それも改修工事を行うことを前提として、簡易な方法を採用したものだ。診断の手法そのものも、ここ十数年で進歩している。
東海大学准教授の田中正史氏は2025年に構造性能評価を行い、この建物は「地震や台風等の揺れに対する安全性も考慮された設計」だと述べている。また2025年8月の記者会見には旧体育館の後継「あなぶきアリーナ香川」のコンペで審査員を務めた日本大学名誉教授・斎藤公男氏がリモート登壇して建築構造について解説。「地震で屋根が崩れるようなことはないし、液状化しても倒れるようなことはない」と断言した。