とはいえ、体育館としての役割を終えた建物を税金で改修し、維持することは難しい、という県の判断も理解できる。長田氏は民間資金による再生を目指し、協力者集めに奔走した。
再生委員会副委員長に就任した上杉昌史氏は日建設計で「渋谷フクラス」などに携わった経歴を持つ経営戦略コンサルタント、理事の青木茂氏は建築再生の第一人者で「リファイニング建築」の提唱者だ。サポート団体には香川にルーツを持つ乃村工藝社、既存建築を活用した宿泊施設の開発に実績のあるデベロッパー、Stapleなどが名を連ねる。
民間によるホテル改修案、事業性も確認
前置きが長くなったが、再生委員会が県に提示した再生計画の内容を見てみよう。前述のように前提は「民間が、全額自己資金で耐震改修・意匠保存・転用工事を行い、自ら事業を営む」ことだ。土地は買い取り、簿価ゼロの建物は低額または無償で譲り受けることを想定する。
行政にとっては、解体費用がいらなくなるだけでなく、かえって2億〜3億円程度の売却収入を得て地域資源を有効活用できる。
再生案には2つのバージョンがあり、案①は「ブックラウンジ併設ホテル」、案②は「1棟ホテル」だ。
左の「案①:ブックラウンジ併設ホテル」は低層部に客室を設け、3階以上の大空間にブックラウンジ・カフェ、アートスペースを整備するもの。地域住民に日常的に使ってもらい、旅行者との交流拠点とすることを目指す。「案②:1棟ホテル」は2階以上に客室を設け、建物中央部に光庭をつくる案。案①よりさらに事業性が高い拡大画像表示
再生委員会の試算によれば、案①は初期コスト約30億円で、3年目以降に1.2億円超の収益、案②は初期コスト約60億円で3年目以降の収益は4億円超を見込む。事業者として参画を表明しているStaple代表取締役・岡雄大氏は「両案ともに、事業として成立する蓋然性がある」と語っている(2025年8月26日の再生委員会記者会見)。名前は明かされていないが、他にも有力な事業者の参画が期待できるという。