Astemoが「V03」と呼ぶ、インホイールモーター搭載の四輪駆動実験車(写真:筆者撮影)
車輪の中心部(ハブ)など、車輪の内部に置いて駆動するモーター。これを、インホイールモーターと呼ぶ。電動くるまいすや、電動バイクなどではすでに利用されている技術である。自動車向けでは、これまで研究段階の域を越えなかったが、フランスのルノーが2027年にハイパフォーマンス系EVの「ルノー 5 ターボ 3E」に、インホイールモーターを搭載することを発表。海外スタートアップでは市場導入の動きもある。そうした中、国内自動車部品大手のAstemo(アステモ)が開発中のインホイールモーターを搭載した実車を走行する機会を得た。EVの未来を切り開くかもしれないインホイールモーター。その乗り味とはどんなものなのか、詳しく紹介する。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
まず、国内自動車部品メーカー大手のAstemo(アステモ)とは何者なのか。
これは、日立製作所の自動車関連会社であった日立オートモーティブと、ホンダ系の部品関連大手のケーヒン、ショーワ、日信工業が2021年1月に統合した企業だ。その当時は「日立アステモ」を名乗ったが、今年4月に「Astemo」に社名を変更している。
「Advanced Sustainable Technologies for Mobility」の頭文字をとって、Astemoである。
こうした大型合併の背景には、自動車産業における大きな変化がある。
経営統合する前までは、ホンダ系の部品メーカーだった3社。それぞれの事業を振り返ると、ケーヒンはキャブレターからはじまり、燃料噴射装置など電子制御の分野で、ショーワはショックアブソーバーなどサスペンション分野で、そして日信工業はブレーキ関連の分野で、それぞれスペシャリストとして技術を育んできた。
だが、近年はソフトウェアを最重要に位置付けて車両を設計するSDV(ソフトウェア・デファインド・ヴィークル)に向けて、自動車産業が大きく転換している。
こうした時代の変化に対応するため、日立とホンダが手を組み、クルマの新しい統合制御技術開発を進めているというわけだ。
Astemo関係者の記念写真。今回の試乗会が行われたAstemoの栃木県内テストコースにて(写真:Astemo提供)