新型「リーフ」の商品説明をする、日産のイヴァン・エスピノーサ社長(写真:筆者撮影)
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経営再建中の日産自動車がジャパンモビリティショー2025(一般公開:10月31日〜11月9日)に出展した。初登場の新型「エルグランド」、第3世代の新型「リーフ」、そして女性層がターゲットの新型「ルークス」など、出展したモデルの周りには常に人の輪ができ、説明員に熱心に質問するユーザーも多かった。プレスデー初日の10月29日には、イヴァン・エスピノーサ社長が自ら報道陣を引き連れてブース内を巡る一幕も。その後、ラウンドテーブルで報道陣からの質問に答えた。翌30日には、2026年3月期の連結業績が2750億円の営業赤字になる予想を発表。経営再建中の日産は、これからどうなっていくのか。今後の見通しについて、ジャパンモビリティショーの現場で考えた。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

「だいぶ変わったなぁ」——。

 ジャパンモビリティショー2025の日産ブースを見て、そう感じた。

 東京モーターショーからジャパンモビリティショーへと衣替えした2年前、日産ブースに登場した展示物の多くは、抽象的な造形物だった。例えば、「GT-R」のイメージをデフォルメして、かなり派手なチューニングカーに見える造形物がステージでは目立っていた。

 もはや「デザインコンセプト」という領域を飛び越えた印象の独創的な造形に対して、報道陣や一般来場者は賛否両論であった。

 こうした人々の反響に対して、日産ブランド戦略関係者は当時、「これはマンガだから」と説明したことが印象に残っていた。彼が言いたかった「マンガ」とは、アニメーションを含めた日本的な創造の世界観のことであると筆者は理解した。

 そんな世界感が「海外の人たちには“刺さる”から」と企画の意図を説明してくれたのだが、筆者は「日産は次の時代に向けて迷走しているな」という感想を持たざるを得なかった。

 日産に限らず、参加したメーカー各社が国や自動車産業界が掲げる2050年のカーボンニュートラルを念頭に置いた展示を模索したが、各社とも、「モビリティの描き方・伝え方」にかなり苦労していたと思う。

 その中で、日産なりの回答を示したのだが、先に説明したような造形物だったのではあるが、それがあまりにも抽象的であったために、大衆の理解が得にくかったのだろう。