インホイールモーター搭載の四駆が登場!

 今回、栃木県内にあるAstemoのテストコースで、4台の試験車両に試乗した。そのうちの1台が、インホイールモーターを装着する四輪駆動車「V03」だ。

 車体はインホイールモーター搭載を念頭に置いた独自設計である。

 車内に乗り込むと、「いかにも研究開発中」という雰囲気がする。

「V03」の車内。様々な計器やコンピュータを搭載している(写真:筆者撮影)

 レーシングマシンのような形状のバケットシートがあり、その周辺には各種の計器類やデータ計測、制御系のセッティングを行うためのパーソナルコンピュータがある。

 着座すると、目の前には普通のクルマのように円形のハンドルがあり、足元にはアクセルペダルとブレーキペダルがあることを確認した。

 つまり、操作としては普通のクルマのように動かせるということだ。

 ただ、ひとつだけ特殊な装置があった。ダッシュボード中央にはシフトレバーがあるが、これは制御を切り替えるデバイスのようで、その下側に三角形を折り曲げたような形状の「新操作デバイス」がある。

 これはハンドルの役目があり、右手で操作するように設計されている。

 では、走り出そう。

加速感は爽快、車両制御の実力に驚愕

 最初はハンドル操作で既定の場所までゆっくり移動する。アクセル操作に対してV03全体が一気に動くようなことはない。最小回転半径が6メートルもあるので、注意しながらハンドルを切りスタート地点に着いた。

「V03」(手前)のホイール内に、インホイールモーターが見える(写真:筆者撮影)

 同乗するエンジニアからは、アクセルを思い切り踏んで加速感を確かめてほしい、と指示があった。

 その言葉に従い、アクセルを大きく踏むとグイグイと加速してあっという間に今回の設定速度である時速60kmに達した。

 モーターの最高出力は、1輪あたり100kWなので合計400kWというハイパワーなEVであり、現時点での設計では最高速度は時速150kmだという。

 最大トルクを抑制してあることもあり、今回の加速感としては豪快というよりは爽快といった印象を持った。

 次いでパイロンスラロームを行ったが、ここで車両の制御のオンとオフの状態を乗り比べた。

「V03」でパイロンスラロームをする様子(写真:Astemo提供)

 制御オンになると、ハンドルを切り出してからとても自然にクルマが旋回し、ハンドルを切り返すと姿勢が安定している。ハンドルからの手応えが柔らかくなった印象で、それがV03の動き全体のスムースさに連動しているのだ。いわゆるリニアな感覚である。

 制御をオフにすると、試験車としてガシガシ動くという印象を持ったほど、制御オンの効果が大きいことが分かった。

 そのあと、路面にうねりがある連絡路を走行すると、制御がオンの状態ではV03全体の揺れの収まりが良いことを確認できた。いわゆるフラット感がある。

 では、この「制御」とはなにを行っているのか。