採算度外視の「値下げ」を断行、日産の牙城を崩しにかかるトヨタの猛追
佐藤氏の公約通りトヨタはbZ4Xの“カイゼン”を果たしたのだが、攻め手はそれだけではなかった。トヨタとスバルはbZ4X/ソルテラのこの改良を機に、車両価格を最大110万円引き下げたのだ。
バッテリーの増強、電力制御のためのパワー半導体を高価なSiCに換装したことをはじめ、改良点はいずれも大幅なコストアップ要因で、値下げできる要素は見当たらない。採算を無視してまで値下げに踏み切ったのは、現時点では日産のものである日本のBEVのリーダーという地位を奪いにかかっているとみていい。日産は現在経営難の真っただ中にあり、対抗するのは困難。勝てるとみるや一気に畳みかける見事な勝負勘と言えよう。
クルマだけではない。トヨタはこの改良に先立ち、昨年トヨタ販売店の主要店舗に改良型bZ4Xの充電性能を最大限引き出すことができる350アンペア、公称出力150kWの超高速型充電器を一斉に配備した。
前述のソルテラのテストでも使用したスペックのものだが、高性能であるぶん充電器の本体価格はきわめて高く、変電設備その他の付帯工事も含めると1カ所あたり2000万円以上、工事の条件によっては3000万円近くかかる。それを1年で400基以上配備し、bZ4Xの新規顧客に充電サービスをリーズナブルな価格で提供している。
クルマの改良、価格の引き下げ、充電網の急速な整備、そして経済産業省の手厚い補助金の“4点セット”は日本のBEVマーケットを一変させた。それまで月販数十台どまりだったbZ4Xの販売台数は、昨年の改良を境に月平均1000台超へと一気に飛躍した。
だが、これはトヨタにとって前哨戦にすぎない。主役は2023年に公表したBEV戦略の全面見直しで開発がリスタートされた次世代BEVだ。bZ4X/ソルテラの大規模改良と大幅値下げという大盤振る舞いは、その登場までの間をつなぐための位置づけとも言える。
そんな大仕掛けを打った佐藤氏だが、近氏もそのBEV攻勢を受け継ぐことになるのだろうか。