性能を1.5倍に引き上げたbZ4X“カイゼン”の衝撃、雪上走行で見えたトヨタの底力

 bZ4Xはスバルとの共同開発によって作られた電動クロスオーバーSUVで、スバルもデザインの細部と足まわりのチューニングを違えたほぼ同一モデルを「ソルテラ」の名で販売している。

 筆者は2023年の早春にそのソルテラのAWD(4輪駆動)モデルをロードテストしてみたが、その時点での完成度は低く、とりわけエネルギー効率の悪さには唖然とさせられるばかりだった。低温とはいえ氷点下ではなかったにもかかわらず、たったの179km走行地点でバッテリー充電率の実に約7割ぶんの電力量を失ってしまったのだ。

 そんなクルマゆえ販売も振るわず、平均月間販売台数は2桁台どまり。トヨタがそれをどう改善するつもりなのかと思っていたが、同年5月にbZ4X/ソルテラのアップデートを行う。コンピュータの制御プログラムを改変し、エネルギー効率を向上させるのが主な目的だった。

 改良プログラムがインストールされたソルテラを再び走らせてみたところ、気候が良かったという追い風を差し引いてもクルマの効率は大幅に向上していた。

2023年にbZ4X/ソルテラのファームウェアアップデートが実施され、機械的な変更なしに性能が大きく向上した(写真はスバルのソルテラ、筆者撮影)

 東京を出発後、高速道路と一般道を併用しながら群馬・新潟県境の三国山脈を越え、さらに奥只見ダムから最高標高1550mの裏尾瀬を経て走行354.3km地点、福島の秘境檜枝岐村の充電スポットにバッテリーの充電残7%で滑り込んだ。

 100%換算の航続距離は381kmだが、檜枝岐村が標高900m台であることを考慮すると、平地では400km以上の航続が期待できる。ハードウェアを変えることなく性能の大幅アップを果たしたのだ。

 そして昨年10月9日、トヨタはさらなる改良を実施。バッテリー容量を71.4kWhから74.7kWhに増強しつつ、電力制御用のパワー半導体に独インフィニオン社製の高効率なSiC(シリコンカーバイド)を採用するなどして省電力化を進めたという。FWD(前輪駆動)に省燃費タイヤを履かせたグレードの公称航続距離は実に746kmと、同時期に日産自動車が発表した「リーフ」の702kmを大きく上回る数値である。

 今年1月、その改良型ソルテラを今度は東北地方の豪雪地帯で走らせてみた。グレードは航続746kmのFWDではなく622kmのAWD。走行時の抵抗が大きいスタッドレスタイヤを装着していることを考慮すると600km弱くらいか。

山形の特別豪雪地帯、月山にて。寒冷環境における電費低下が小さくなり、より長い距離を走れるようになった(スバル「ソルテラ」、筆者撮影)

 今年の強烈な寒波のため厳しいドライブになることは容易に予想できたが、何も人類未踏の地に行くわけではなく、多くの人が普通に生活を営んでいるエクメーネ(居住可能地域)だ。これで音を上げるようでは話にならない。

 東京を出発後、気温は低いが積雪のない太平洋側を福島県の相馬まで進み、そこから阿武隈山地を越えて走行356.6km地点、内陸の福島市に到達した。充電残3%で100%換算の航続距離は368km。

 行程の半分強が氷点下、とくに福島県に入ってからは最低マイナス6度とBEVの苦手な低温環境であったことを考えると、初期型であれば250kmも走れなかったことだろう。フルモデルチェンジなしで性能を1.5倍に引き上げたのだ。

 このロードテストでは低温時の充電性能もみてみた。日本の充電規格CHAdeMOに準拠した充電器の中では最高性能に近い最大電流350Aの装置を使用してみたところ、車両への投入電力量は15分間で32.2kWh、30分で55kWhにのぼった。

 この数値は筆者が過去にテストしたCHAdeMO車の中では最高記録だったが、それをマイナス2度の寒気の中で達成したことも特筆に値しよう。

気温マイナス2度の中で急速充電を試す。充電器出力122kWは望外に高い数値で、15分で33.2kWhの投入電力量を得られた(筆者撮影)