社殿や鳥居は存在せず土地だけが存在する神社……

 寺院や神社の売買が横行する背景のひとつに、人口減少に伴う地域の高齢化、過疎化に伴う「不活動宗教法人」の急増がある。不活動宗教法人とは、宗教活動をしていないにもかかわらず、法人格だけが残存している法人のことをいう。その多くは、住職や宮司が亡くなって、後継者が現れないまま放置されてしまっているものだ。

 不活動宗教法人の形態はさまざまである。本堂が朽ちるなど境内は荒れ果て、法人の代表者がこの世に存在しない寺院。社殿や鳥居は存在せず、土地だけが存在する神社。普通の民家やアパートの一室が宗教法人になっているようなケース……。

 一般人が不活動宗教法人であることを見極めるのはかなり難しい。だが、それらは登記簿上、れっきとした「宗教法人」として存在している。

土地だけになった神社が売却され、売りに出されている(京都府)

 寺院後継者がいなくても大抵の場合は、同じ宗派の住職が兼務したり、地域の檀信徒だけで護持したりする。きちんと、儀式・儀礼を受け継ぎ、役員名簿や会計を適正に管理していれば、さほどの問題はない。しかし、法人が維持・管理できなくなった時に、速やかに解散手続きをしなければ、不活動宗教法人になってしまう可能性がある。

 そのまま放置した場合、宗教を隠れ蓑にした悪質なビジネス展開などを企てる者が、法人を取得することがある。不活動宗教法人を買うことによって、脱税・マネーロンダリング行為だけではなく、カルト的な教団をつくりあげることも可能だ。

 また、外国資本が宗教法人の不動産を購入することも考えられる。無住になった宗教法人を放置すると、地域の安全が脅かされることになる。

 文化庁が2025(令和7)年7月に公表した調査結果によれば、2024(令和6)年12月31日時点で5019もの宗教法人が不活動状態にあるという。前年末の4431法人から588法人の増加となっている。2022(令和4)年末には3329法人だったことを考えると、驚くべき急増である。

 文化庁の不活動宗教法人の定義は、宗教法人に義務付けている役員や財産の状況などを記した「事務所備付け書類(写し)」が所轄庁に2年以上、提出されていない法人を指す。この備付け書類の提出義務は、法人の管理運営の実態を所轄庁が継続的に把握するために、オウム真理教事件発覚後の1995(平成7)年の法改正で創設された重要な仕組みである。

 だが、書類提出の体裁だけ整え、健全な法人に見せかけているケースもあり、形骸化しているのも確かだ。「不活動」あるいは「見せかけの宗教活動」をしている宗教法人の実数は、先出の5019法人よりもはるかに多いだろう。