告発者がカウンターを受け二次被害に遭う可能性
結果、パワハラは再生産され続け、未然に防ぐことも再発を防止することもできません。根絶は現実的に不可能なのです。ならばせめて、パワハラの発生を最小限に抑えるためにできることは何なのかを考える必要があります。
その最たるものは、加害者への罰則を厳しくすることでしょう。自重しようとする人が増え、有効な施策になり得るかもしれません。ただ、パワハラの訴えが虚偽である可能性もある以上、告発されたという理由だけで、すぐに罰するのは無理があるというものです。
罰則を厳しくするのであれば、パワハラの疑いが生じた際に第三者が調査してパワハラの有無を判定し、認定された場合についてのみ罰則の対象とするといった具合に手順を踏んで対処する必要があります。しかし、いまのところそのような罰則は設けられていないのが実情です。
となると、パワハラの発生を最小限に抑えるには、加害者になり得る組織内の強い立場の者自身が自らの振る舞いを常に疑い、律していくしかありません。しかしながら、兵庫県の一件では知事を告発した元県民局長がカウンターを受ける形で降格となった上、3カ月の停職処分が下されました。
パワハラと感じた被害者が告発したとしても、強い立場にいる加害者側の対応次第では二次被害に遭う可能性があります。それは、被害者側が背負っている大きなリスクです。だからといって、訴えないままでいればパワハラが続いて、心身が追い込まれていくことになります。そうなると、もはやその職場に安住の地は見出せません。
兵庫県知事を告発した元県民局長は「死をもって抗議する」というメッセージとともに音声データなどを残し、自ら命を絶ったと報じられています。そのまま耐え続けていてもつらいという状況の中で、覚悟を決めた切実な訴えだったことが伝わってきます。