公益通報とSNSが変える力学──予防と是正の仕組みへ
社会に出て大人であるはずの者たちが、子どもが宣言していることを実践できていない。そう考えると暗澹たる気持ちになりますが、大人たちの間でも外部通報については徐々に機能するようになってきたことは明るい材料です。浜岡原発をめぐる不正や福井県前知事のセクハラも、外部通報がきっかけで表沙汰になりました。
静岡県御前崎市議会の原子力対策特別委員会臨時会合で、頭を下げる中部電力の豊田哲也原子力本部長(右から2人目)ら(2026年1月9日、写真:共同通信社)
また、筆者自身が直接聞いた事例もあります。そのケースでは、役員から個人的に飲みに誘われたり体を触られたりし、「カバンでも何でも、欲しいものを買ってあげる」などと言われて不快な思いをした女性の内部通報によってコンプライアンス部門が動きました。その後、役員は更迭されています。
現代では誰もがスマートフォンを持ち、SNSが発達したことで個人が直接社会に訴えて、情報を拡散させる術を持つようになりました。誤った情報が拡散するリスクもあるものの、テクノロジーの発達によって情報発信者がメディアだけではなくなり、個人の間での情報シェアが社会全体に連鎖していく仕組みが構築されるようになっています。
「サンタクロースって本当にいるの?」と子どもに聞かれた時に、「いるよ」と答える。大人の事情とは、本来そんな優しい振る舞いに対して使う言葉だと思います。不当行為を働く権力者に都合よく、子どもの事情でしかないものを大人の事情だと言い換えてしまう不文律は、ただ正直者がバカを見る職場を形づくってきたに過ぎません。
大人の事情が職場や社会にマイナスの影響を及ぼしていることは、すでに数々の事例が教訓として示しています。また、大人の事情にどう対処すればよいのかは、先に挙げた四カ条にあった通り子どもたちでも知っていることです。そして、いまや誰もが社会全体に情報発信できる術も持つようになりました。
長く職場を蝕んできた大人の事情を克服するための材料は、もう十分にそろっています。しかし、職場の権力者に限らず、不当行為を隠せた方が都合が良いと思う人が多いうちは、なくならないでしょう。
不当行為に見て見ぬふりをせず、勇気を出して行動を起こせる人が増えた時、職場を支配してきた大人の事情は「大討伐時代」を迎えることになるのではないでしょうか。



