A教授からは「俺の秘書にならへんか?」というメッセージもあった。将来は研究者になることを目指していた美里さんにとって、侮辱以外の何物でもなかった。居酒屋の席では「女の子がメニューを選んでくれ」と言われた。

「お茶会」では「研究者としてのキャリアを考える上での助言をする。結婚に関してはいつしても問題ないが、妊娠・出産は考えてしないといけない。リミットは45歳までだ。出産をきちんとしたタイミングで行わないといけない。出産した女性は研究よりも子育ての方にやりがいを感じてしまうから、研究者としてのキャリアが積みにくくなる」という発言があった。露骨なセクシャルハラスメントである。

他の教員らに被害を訴えると・・・

 体調が悪化し始めた。夜は寝つきが悪くなり、体重は減った。身体的症状が現れ始め、大学院の他の教員らに相談した。返ってきたのは驚くべき答えだった。

「Aさんが指導熱心で、あなたのことを一番弟子のようにかわいがっていたから、熱が入りすぎたんだよ」

「Aさんも、一番の愛弟子からこうやって訴えられて、精神的に動揺して、変な行動をとり続けてしまっているんだと思う。ショックを受けて、彼の中での人生設計がガタガタと崩れてしまったんだよ」

「僕たちもAさんの同僚として情がある。教授会は告発を受け付けるようなシステムになっていない」

 被害を訴える美里さんに手を差し伸べてくれる教員は誰もいなかった。自己保身をするか、同僚を守る人しかいなかったのだ。