7月から9月までの3カ月間、島根県で離島留学をした。島根では、障害者総合支援法に基づく「就労継続支援事業所」でインターンとして働いた。

 島根県での日々は、都会育ちの美里さんにとっては新鮮なことの連続だった。濃密なご近所付き合い。野菜や海の幸など、自然の恵みをいかした食生活。都会のような便利な暮らしではないかもしれないが、地方ならではの豊かな暮らしに気が付いた。

美里さんが「離島留学」をした際に撮影した写真(その2)

生きていく上で決定的に重要な「ある実感」

 大阪に帰って来た美里さんに、改めて話を聞いた。美里さんはここ3年間の歩みを後悔しているわけではないという。有名国公立大を卒業したが、「大手企業に入りたい」という希望は元々なかった。周りからどう思われようと、自分が興味のある道に進んできた。「環境を変える」という選択は、その都度きちんと取ってきた。自分では「貧乏くじ」を引いたつもりはない。困ったときに助けてくれる人が周りにいたからだ。

 これまでの経験を通じていま思うことは、「自分は誰かの役に立っている」という実感は、社会の中で生きていく上で決定的に重要だということだ。大学院を辞めた時、会社を辞めた時、「自分は社会の中で居場所がないのかもしれない」と考えてしまったことが、辛さに拍車をかけたのだ。

「自分は社会の役に立っているという実感があれば、孤独にならずに、健やかに生きられると思う」

 離島留学、就労継続支援事業所でのインターンを通じて、美里さんはその思いを強くした。今は大阪にある事業所で働こうと見学を行っている。将来的には、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を取ろうとも考えている。

「利用者を大事にしている事業所を見つけて働きたい。利用者の居場所作りのお手伝いをしたい」と語る美里さんは、新たな道に向けて歩み始めている。

美里さんが「離島留学」をした際に撮影した写真(その3)