宇宙人は存在するのか、しないのか。古来、人類が盛んに議論してきた究極の謎である。
「地球外生命体は、広大な宇宙のどこかに存在している。賭けてもいい」。そう笑顔で言ってのけるのは、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻教授の戸谷友則氏である。
戸谷氏は、地球外生命体が存在する可能性について、宇宙物理学の観点から研究を進めている。なぜ地球外生命体が存在すると考えられるのか、生命はどのように誕生したのか、生命にかかわる研究の魅力とは──。『宇宙になぜ、生命があるのか 宇宙論で読み解く「生命」の起源と存在』(講談社)を上梓した戸谷氏に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)
──本書「宇宙になぜ、生命があるのか」では、地球以外の惑星に生命があるのかという問題について、宇宙物理学の視点から考察していました。結論として、地球外生命体は存在するのでしょうか。
戸谷友則氏(以下、戸谷):宇宙全体を見渡せば、地球以外にも生命はたくさん存在しているはずです。
ここで注意していただきたいのは「宇宙全体」という言葉の意味です。一般的に、宇宙の大きさは「半径138億光年」と捉えられがちです。
でも、それはあくまでも「光を用いた手法で観測可能な宇宙」の大きさです。観測可能な宇宙の外側には、さらに広大な宇宙が広がっていると考えられます。この外側の宇宙は「インフレーション宇宙」と呼ばれています。
観測可能な宇宙だけでも、太陽のように自ら光を発する恒星は10^22(10の22乗)個あります。10^22個は10,000,000,000,000,000,000,000という途方もなく大きな数です。そして、恒星の周囲を公転している惑星の数は、10^22個では済まされないほどたくさんあります。その中には、地球のように、生命が存在するに適した環境の惑星があることも、最新の科学によって明らかになっています。
これだけの数の星があれば、地球以外のどこかの惑星に生命が存在したとしても不思議ではない。さらに、星の数を観測可能な宇宙からインフレーション宇宙にまで広げれば、生命が存在する可能性は極めて高い。
ただ、我々が住む地球のすぐ近くに生命が存在しているかという点は別問題です。観測可能な138億光年の宇宙の中で、生命を育む星は我々が住む地球だけだという可能性もあります。私は身近なところに生命が存在する可能性は低いと考えています。
生命は、身近なところでは非常にレアな存在です。しかし、インフレーション宇宙まで見渡すと生命は非常にありふれた存在である。これが私の考え方です。
──生命の材料となる有機物や原始生命の誕生の場の候補として、「陸上の池や沼、あるいは海岸の浅瀬」「海底の熱水噴出孔」「宇宙から降り注ぐ有機物を含んだ塵や隕石、彗星のかけら」を挙げています。それぞれの候補の、生命誕生の場所としての「有利な点」と「不利な点」について教えてください。