2015年、ソフトバンクホークス監督就任1年目に日本一となり、孫正義オーナー、松田宣浩選手と優勝パレードに参加し、ファンに手を振る工藤公康監督(写真:共同通信社)

管理職やチームリーダーに求められることは何か。大きな契約を取るなど数字を残すことは重要だが、一過性の売り上げで終わらせては役目を果たしたとは言えない。求められるのは、継続的に結果を残す「育てて勝つマネジメント」だ。プロ野球・福岡ソフトバンクホークス監督として5度の日本一・Aクラス6回という実績を残した工藤公康氏は自著『プロ野球の監督は中間管理職である』(日本能率協会マネジメントセンター)で、「プロ野球監督」と「組織の中間管理職」の共通点から、「育てて勝つ」ポイントを明かしている。

(東野 望:フリーライター)

勝つだけではリーダーとして不十分

 著者の工藤公康氏は、投手としてプロ野球で224勝を上げた名選手の一人。現役引退後は2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任し、1年目から日本一へと導いた。

 翌シーズンは日本ハムファイターズの後塵を拝し、パ・リーグ2位に。連続Aクラス(リーグの上位3チーム)となったが、監督就任の際、孫正義オーナーから「10連覇できるようなチームをつくってくれ」と声をかけられていた期待を裏切ることになった。2年目にして連覇の道は途切れてしまったのだ。

監督は「勝たせる」だけではいけない。勝たせ続けなければいけないのだ。
勝ち続けるチームをつくらなければいけないのだ。
私は痛感しました。

 勝たせ続けなければいけない——。これは、企業をはじめ「競争」にさらされる組織のリーダーが常に意識しなければならないことだ。大きな成功を収めるのも大事だが、それを続けられる組織にすることがリーダーの役割なのだ。

 ではリーダーにはいったい何が求められるのか。

監督は「唯我独尊のリーダー」であってはいけない

 2016年、パ・リーグ2位で終わった工藤氏は、「監督とはどうあるべきか」をじっくりと考え直した。思い至ったのは、選手やコーチ、トレーナーからの意見や提案に耳を傾けず、自分の考えを押し付けがちだった指導スタイルのあり方だ。

 日本一を経験した翌シーズンの2年目は、序盤こそ好調な滑り出しだったこともあり、周囲もすんなり従ってくれたが、中盤以降、失速するに伴って現場から不満や苛立ちが表面化していく。

前年に比べて、チームの力が落ちたわけではありません。失速の原因は、私のコミュニケーションが拙かったことにあるのです。

 そこでゼロから「監督とは何か」を考えた工藤氏。その先に見えたのは、「監督とは中間管理職だ」ということだった。

 中間管理職は、絶対的なリーダーでもなければ、組織全体を率いる長でもない。求められるのは、自分のやり方を押し付ける唯我独尊型のリーダーではなく、組織を上手く回すためのコミュニケーションに長けた人材だ、と考えるようになった。