スタメンや打順の決め方にも変化が

「監督は中間管理職」と自覚してから、スタメンや打順の決め方にも変化が現れたという。

 それまでは試合前の練習を見て、工藤氏が決めていたが、監督とヘッドコーチ、バッティングコーチ2人の計4人による合議制にチェンジした。それぞれスタメンと打順の原案を持ち寄り、ベストなメンバーを話し合うようにしたのだ。

 さらに、中継ぎピッチャーなど試合中の采配に関しても、あらかじめコーチらとある程度固めておくことにした。試合前に綿密にシミュレーションを行うことで、試合中の「想定外の事態」が起きにくくなったそうだ。

46歳で勝利投手となった工藤氏。現役時代から球界屈指の理論派として知られる存在だった(写真:共同通信社)

 以前は、監督は「決める人間」だと思っていた工藤氏だが、この頃からその意識が変わっていく。

中間管理職とはきっと、さまざまな部署や役職の「中間」に立ち、周りのみんなが機能するよう、常に準備する人間なのです。

「思考しない選手」を育てないために

 中間管理職である監督が準備するのは、スタメンや打順といった試合に直接関係することだけではない。選手育成に関しては従来の意識を改める必要性を説く。

 かつてのスポーツ界では「指導者の教えは絶対」で、練習の意味を聞こうものなら鉄拳制裁が飛んできたという。しかし工藤氏は、現在の指導者はトレーニングに関する「確かな知識」を身につけ、やる意味を聞かれたら理路整然と説明できるようにしておくことが欠かせないと考える。

「いいからやれ」と押し付けるだけでは「思考しない選手」が育つだけだからだ。そもそもトレーニング理論も日々新しいものが登場し、知識のアップデートが求められる。監督・コーチがきちんと勉強(準備)し、選手とコミュニケーションを取りながら練習やトレーニングに臨まなければ、チームは強くならない。