今やわれわれの生活に欠かせない存在と言える「コンビニ」。欧米の小売業界とは異なり、ライフスタイルや社会構造の変化を背景に急成長を遂げてきた日本のコンビニ業界は、他国に類を見ない特徴的なイノベーターと言っても過言ではない。本連載では『コンビニがわかれば現代社会のビジネスが見えてくる―日本的小売業のイノベーター』(塩見英治著/創成社新書)から、内容の一部を抜粋・再編集。業界特有の経営戦略をはじめ、近年進む食品ロス対策の取り組みなど、コンビニ市場を取り巻く最新動向を探る。
第6回は、北海道で売上高、店舗数を伸ばし続けるローカルコンビニ「セイコーマート」の戦略に迫る。大手コンビニ各社も太刀打ちできない、道内市場トップを守り続ける経営の秘密とは。
「地域密着」のセイコーマートの展開
コンビニの4社寡占の構造は基本的に変わらないが、北海道で4割のシェアを誇るローカルチェーンコンビニのセイコーマートが、顧客満足度で5年連続の首位を占めている。売上高、店舗数も一貫した伸びを示している。同社の店舗の外観は下の画像の通りである。
セコマは1971年に1号店を開店し、1991年には北海道の店舗数が100店舗、1998年には700店舗に拡大している。もとは酒の卸売り業だったが、2000年に入ると酒税法の緩和が進められ、この規制緩和を背景に、大手コンビニは商品力をもとに競争力を強化させていく。
セコマは、蓄積された経営資源を活用し、コンビニ事業を整備・拡張して、2006年には1000店舗を突破している。1990年末までに、北海道の主要都市への出店を果たし、セブン・イレブンやファミリーマートの追撃にもかかわらず、北海道市場でトップの位置を守り続けている。
2000年以降は、生産領域の多角化が進展し、2004年にはダイマル乳品の傘下でのアイスクリーム、京極製氷傘下での飲料・氷類、梅沢製麺傘下での麺類の生産活動を展開している。物流センター整備を中心とする物流システム強化の大型投資、ATMの設置、道内の店舗拡大、直営化への転換に2000年代前半までに着手する。道内の稚内市、札幌市、釧路市、帯広市、函館市、旭川市の6カ所の物流拠点を通じた道内全店舗への一括配送は、1990年代から行われていた。
直営店への転換は、1990年代末から着手され、2000年代半ばから後半にかけて、さらに充実させていく。直営化については、直営店の運営・管理を行うセイコーリテールサービスを1993年に設立し、2000年頃に直営店比率を2割弱に高めている。