写真提供:共同通信社

 今やわれわれの生活に欠かせない存在と言える「コンビニ」。欧米の小売業界とは異なり、ライフスタイルや社会構造の変化を背景に急成長を遂げてきた日本のコンビニ業界は、他国に類を見ない特徴的なイノベーターと言っても過言ではない。

 本連載では『コンビニがわかれば現代社会のビジネスが見えてくる―日本的小売業のイノベーター』(塩見英治著/創成社新書)から、内容の一部を抜粋・再編集。業界特有の経営戦略をはじめ、近年進む食品ロス対策の取り組みなど、コンビニ市場を取り巻く最新動向を探る。

 第4回は、セブン-イレブンのPB(プライベートブランド)シリーズ「セブンプレミアム」の戦略に注目。従来PBのライバルであったNB(ナショナルブランド)メーカーとタッグを組んだ狙いやマーケットでの成果について見ていく。

<連載ラインアップ>
第1回 人口減少、経済停滞が続く日本で、なぜコンビニ業界は健闘し続けられるのか
第2回 セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート…各社の戦略に見る特徴と課題とは?
第3回 セブン-イレブンの店舗では、なぜ必要なタイミングで必要な量の商品が適切に並ぶのか?
■第4回 コスト削減・低価格が目的ではない、セブン-イレブンが掲げる独自のPB戦略とは?(本稿)
第5回 ローソン、ファミリーマートがセブン-イレブンを追撃、大手3強時代はいかにして訪れたか?
第6回 大手コンビニもかなわない、北海道で絶大な支持を誇る「セイコーマート」の人気の秘密とは?
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セブンプレミアムの商品開発体制とPB

 以下、商品開発に関する同社のレポートを参照する。セブン・イレブンは、1980年代から、おでん、おにぎりなどの販売を開始したが、ベンダーと一緒になった取り組みをしていた。

図4-1 セブン・イレブンのPBの構成と推移
出所:セブン&アイホールディングス,経営レポート(統合報告書)2022年1月12日版,42ページ。
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 さらに、弁当、各地域の特性を生かした地域対応商品についても、協力ベンダーと共同開発した商品を販売していた。ただし、当初のオリジナル商品の開発については、弁当やおにぎりなどが中心であり、中小総菜ベンダーと商品開発を行っていたとされる。

 その後、店舗数も増え、多頻度小口配送を展開していく中で、従来の惣菜ベンダーだけでは配送面の対応、商品開発力対応ができなくなる。1979年に、商品の品質管理を目的として、大手の米飯ベンダーを中心とした日本デリカフーズ組合を発足させる。生産体制、品質管理のチェックという目的から始めたが、その後チームマーチャンダイジングを支える組織として展開していくこととなる。

 またセブン・イレブンは、大手の有力メーカーとチームとして商品開発をし、商品供給体制を構築するようになる。その際、メーカーのブランドを付けながら、セブン・イレブン向けの商品を販売するといったことも展開していく。共同開発においては、セブン・イレブンは大手メーカーにも専用工場体制構築を要請し、1984年にキユーピーが始めたのをきっかけに、ハウス食品、プリマハム、味の素等が、セブン・イレブン専用工場を整備していくこととなる。

図4-2 MDの結びつき
出所:セブンイレブン「セブンイレブンの横顔 2022-2023」,22 ページ。
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 それまでの商品開発は、特定のベンダーやメーカーとの共同開発であったが、1990年代後半から複数のベンダー、メーカーがチームを組んで商品開発を始める。これら1990年代後半から始まった、セブン・イレブン独自商品開発(チームMD)の仕組みをべースとし、「セブンプレミアム」の販売を開始する。

「セブンプレミアム」における商品開発では、トップメーカーとの共同開発によりオリジナル商品の導入を積極的に行っている。チームMDでは、理想となる商品を開発するために、メーカーの持つ技術力とセブン・イレブンのマーケティング力がフルに活用されていると言われている。

 商品開発におけるPOSデータの役割も重要である。チームMDにおいては、POSデータをはじめとするセブン・イレブンの店頭情報や市場動向から仮説を立て、国内外のメーカー・取引先、物流企業の専門的な情報やノウハウをかけあわせて、フィードバックをくり返しながら新商品を開発している。