カナダのコンビニエンスストア大手、アリマンタシォン・クシュタール(ACT)がセブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイHD)に買収を提案した。セブン&アイHD側はこれを拒否する旨の回答を行ったが、ACTはさらなる攻勢に出る。株式買取価格プレミアムの大幅に上乗せしたとも伝えられている。
コンビニ業界をリードしてきた有名企業へのM&A提案は、他の企業経営者にとっても他人事ではない。小売業に詳しいアナリストでGマネジメント&リサーチ代表の清水倫典氏に聞いた。
セブン&アイ側は「著しく過小評価」と回答
2024年8月、セブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイHD)への買収提案が報道され、ビジネスシーンに大きな波紋が広がった。カナダのコンビニエンスストア大手、アリマンタシォン・クシュタール(ACT)からの提案を受けて、セブン&アイHDは社外取締役で構成する特別委員会を立ち上げた。
セブン&アイHDによると、ACTの提案は買取価格14.86米ドル、全株を現金で取得するという内容だった。1ドル147円換算で1株2184円、買収総額は約5.7兆円である。報道直前の株価は1700~1800円で推移しており、これを基準とすれば2割強~3割弱のプレミアムが乗せられたことになる。なお、利益水準の高いACTの時価総額は約8兆円に上る。
9月6日、セブン&アイHDはACTの提案を拒否する旨の回答を公開した。そこには、以下のような記述がある。
<特別委員会としては、貴方の提案はタイミングを計った機会主義的なものであり、かつ当社が既に実行をしている或いは今後実行を検討している追加的な施策による潜在的な株主価値の短中期的な実現について、著しく過小評価していると考えます>
「セブン&アイHDはACTによる今後の再提案について、『全く受け付けない』とも、『条件次第では受け入れる』とも言っていません。公表された回答を読むと、曖昧な部分が多く分かりにくい文章です。先に英文を作成して日本語に訳したのだと思いますが、それも影響しているのでしょう」と語るのは、Gマネジメント&リサーチの清水倫典氏である。清水氏はこう続ける。