今やわれわれの生活に欠かせない存在と言える「コンビニ」。欧米の小売業界とは異なり、ライフスタイルや社会構造の変化を背景に急成長を遂げてきた日本のコンビニ業界は、他国に類を見ない特徴的なイノベーターと言っても過言ではない。本連載では『コンビニがわかれば現代社会のビジネスが見えてくる―日本的小売業のイノベーター』(塩見英治著/創成社新書)から、内容の一部を抜粋・再編集。業界特有の経営戦略をはじめ、近年進む食品ロス対策の取り組みなど、コンビニ市場を取り巻く最新動向を探る。
第2回は、マーケティングの大家フィリップ・コトラーの提唱する、デジタルテクノロジーを駆使した「顧客中心のマーケティング」を基に、コンビニ大手各社の戦略を見ていく。
<連載ラインアップ>
■第1回 人口減少、経済停滞が続く日本で、なぜコンビニ業界は健闘し続けられるのか
■第2回 セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート…各社の戦略に見る特徴と課題とは?(本稿)
■第3回 セブン-イレブンの店舗では、なぜ必要なタイミングで必要な量の商品が適切に並ぶのか?
■第4回 コスト削減・低価格が目的ではない、セブン-イレブンが掲げる独自のPB戦略とは?
■第5回 ローソン、ファミリーマートがセブン-イレブンを追撃、大手3強時代はいかにして訪れたか?
■第6回 大手コンビニもかなわない、北海道で絶大な支持を誇る「セイコーマート」の人気の秘密とは?
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コロナ禍の巣ごもりの中、折からのデジタルの波に乗り、大手各社は、差別化の戦略にデジタルテクノロジーを駆使するようになっている。
新たな戦略をもたらしたのは、とくに、インターネット、コンピューター、携帯の普及であった。今では、強力なコンピューター処理能力、オープンソース・ソフトウエア、高速インターネット、クラウドコンピューティング、モバイル機器の普及、ビッグデータの処理、ロボットの活用など、すべての基盤が揃っている。
コトラーは、これらを駆使したホリテック(全体的な)マーケティングを提唱している。顧客中心のマーケティングでもあり、顧客が感じる身体的・精神的な感動や共感をとらえ経験行為を生かすマーケティングである。価値を創造し、これらを可視化して顧客に提供する。社会の中では、個人間のつながりや、開放的なつながりの意義が重要になる。
これらのテクノロジーは、フラットで普及しやすいために、先行投資が戦略の決め手となる。今日の先進的なテクノロジーは、ビッグデータのように、人間の学習の仕方を模倣するよう洗練されてきており、IoTやブロックチェーンで人間の社会関係を再現し、リアルタイムでの市場調査を行い、迅速にパーソナルなマーケティングを実行できる。
顧客ごとにカスタマイズして提供されるサービスである。商品開発についても、アンゾフは多角化を成長戦略の1つとしてとらえ、事業を市場と技術に分類したうえで、市場を既存企業と新規市場に、技術を既存技術と新技術とに分け、製品・市場戦略を4つの構成で分析した。
これに対し、PB戦略の章で詳しく述べるチャン・キムとレネ・モボルニューの提唱するブルー・オーシャン戦略は、既存の技術や商品を改良した上での市場の開拓を提唱する。
製品管理では、試作品で販売予測を行い、顧客の反応を分析し、ブランドを構築できる。現場のスタッフも、自動化によって人力を解放できる。組織はこれらのリアルタイムの分析に相応すべく、アジャイルに組み立てなければならない。