写真提供:©Mike Fox/ZUMAPRESS.com/共同通信イメージズ

 世界で初めて時価総額3兆ドルを超えたアップル。iPhone、iPad、Apple Watchなど革新的な製品を世に送り出し、次々に人々の生活を変えてきた。また、常にイノベーションを起こしながら、高成長・高収益を維持している点で投資家の関心も集める。本連載では『最強Appleフレームワーク ジョブズを失っても、成長し続ける 最高・堅実モデル!』(松村太郎、德本昌大著/時事通信社)から、内容の一部を抜粋・再編集。GAFAMの一角を占めるビッグテックは、ビジネスをどのように考え、実行し、成果を上げているのか。ビジネスフレームワークからその要因を読み解いていく。

 今回は、2007年の初代iPhone発表時にスティーブ・ジョブズが行ったプレゼンを例に、効果的なマトリクス分析の手法について考える。

スティーブ・ジョブズは、なぜアイフォーンがどんなスマートフォンなのかを一発で理解させられたのか?

最強 Apple フレームワーク』(時事通信社)

 アップル(Apple)の共同創業者であるスティーブ・ジョブズは、クリエイティブな経営者として尊敬を集める稀有(けう)な存在として知られています。

 見えないところまで美しさにこだわりぬき、妥協をいっさい許さない、そんな美的センスを貫き、一度はアップルを追い出されながらも、再び返り咲いた1996年以降、アイマック(iMac)、アイポッド(iPod)、アイフォーン(iPhone)、アイパッド(iPad)と、「i」が付く製品を次々に送り出しました。

 これらの新製品を次々に発想する経営者像から、直感、ひらめき、クリエイティブ…、そんなイメージをいだくことも少なくありません。

 しかしフレームワークを通じてアップルやジョブズの取り組みを分析してみると、常に明確な未来像が描かれており、そのときでき得る最短のルートを選ぶシンプルな思考の持ち主でした。

 意外にも、実にロジカルな一面をうかがい知ることができるのです。

 そうしたジョブズの思考の一端が見られるのが、2007年1月にアメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコで開催された「マックワールド(MacWorld)2007」の基調講演で、初代アイフォーンを初めて披露した際のプレゼンテーションでした。