
世界で初めて時価総額3兆ドルを超えたアップル。iPhone、iPad、Apple Watchなど革新的な製品を世に送り出し、次々に人々の生活を変えてきた。また、常にイノベーションを起こしながら、高成長・高収益を維持している点で投資家の関心も集める。本連載では『最強Appleフレームワーク ジョブズを失っても、成長し続ける 最高・堅実モデル!』(松村太郎、德本昌大著/時事通信社)から、内容の一部を抜粋・再編集。GAFAMの一角を占めるビッグテックは、ビジネスをどのように考え、実行し、成果を上げているのか。ビジネスフレームワークからその要因を読み解いていく。
今回は、「パーパス」のビジネスフレームワークをテーマに考察。「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」を掲げたジョブズ時代を振り返るとともに、「環境対策」に主眼を置く現在のアップルのパーパス経営についてひも解いていく。
「パーパス」のある企業は、組織、顧客、そして社会をまとめる

アップルはスティーブ・ジョブズが復帰し、ジョナサン・アイブとの二人三脚で、世の中に新しいプロダクトを送り出すようになった1996年以来、「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」というコンセプトを、「アップルのDNA」として語り続けてきました。
ジョブズがこの世を去る直前の2011年3月、第二世代となるアイパッド2(iPad2)を披露するスペシャルイベントでも、次のように述べています。「アップルのDNAには、テクノロジーだけでは不十分だと刻まれている。我々の心を震わせるような成果をもたらすのは、リバラルアーツ、人間性と、テクノロジーが融合することだと信じている」
リベラルアーツは、人間を束縛から解放する知識、そして生きるための力を身につける学問を起源としており、アメリカでは、幅広く基礎的な教養、人類の知恵を学び、問いを立てる力を育むとして重視されています。日本の大学教育における教養課程や専門課程、職業課程のどれとも異なる考え方といえます。
ジョブズは、テクノロジーの追求だけでは、アップル製品はでき上がらないと考え、人間をさまざまな制限から解放するための道具を作り出すため、テクノロジーとリベラルアーツとの「かけ算」をアップル製品のコンセプトに置いていました。