ヨーロピアン・エナジーCEOのエリック・アンダーセン氏(左)とともに、デンマークにある太陽光発電所を歩くアップルCEOのティム・クック氏(右)と同社で環境対策を推進するバイスプレジデントのリサ・ジャクソン氏
写真提供:DPA/共同通信イメージズ

 世界で初めて時価総額3兆ドルを超えたアップル。iPhone、iPad、Apple Watchなど革新的な製品を世に送り出し、次々に人々の生活を変えてきた。また、常にイノベーションを起こしながら、高成長・高収益を維持している点で投資家の関心も集める。本連載では『最強Appleフレームワーク ジョブズを失っても、成長し続ける 最高・堅実モデル!』(松村太郎、德本昌大著/時事通信社)から、内容の一部を抜粋・再編集。GAFAMの一角を占めるビッグテックは、ビジネスをどのように考え、実行し、成果を上げているのか。ビジネスフレームワークからその要因を読み解いていく。

 今回は、アップルが取り組む環境対策プロジェクト「Apple 2030」から、企業が繰り返しイノベーションを起こすために必要なビジネスフレームワーク「集合天才」の組織作りについて掘り下げていく。

秘密主義のアップルで唯一未来を語るプロジェクト

最強 Apple フレームワーク』(時事通信社)

 アップルは、かつて、テクノロジー企業として、秘密主義を掲げていることで有名でした。

 新製品については、社内であっても、別の部署の人たちは、公式に発表されるまで、その内容について知らされず、徹底的な情報管理が行われていたのです。

 役員へのインタビューでも、公式にコメントを求めても、お決まりの文句である「アップルは未来の製品に関してのコメントはしない」が繰り返されるだけなのです。

 このことは、アップルが世界中のユーザやファンを惹(ひ)きつけ、「いったい次に何をするんだろう?」とワクワクさせる演出を盛り上げるには十分でした。

 そして、新製品に関しては、現在もなお、そうしたコミュニケーションが続けられています。

 しかしネガティブな影響もあります。取り組みについての連続性を感じにくくなってしまったり、より長期的なビジョンを共有して行動する、という組織内のモチベーション作りが難しくなる側面があるからです。

 そうした中で、アップルとしては数少ない、未来の目標を示している取り組みこそ、「Apple 2030」というKGIが掲げられた環境対策、特に地球の気候変動に対する取り組みでした。