写真提供:©Budrul Chukrut/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ

 世界で初めて時価総額3兆ドルを超えたアップル。iPhone、iPad、Apple Watchなど革新的な製品を世に送り出し、次々に人々の生活を変えてきた。また、常にイノベーションを起こしながら、高成長・高収益を維持している点で投資家の関心も集める。本連載では『最強Appleフレームワーク ジョブズを失っても、成長し続ける 最高・堅実モデル!』(松村太郎、德本昌大著/時事通信社)から、内容の一部を抜粋・再編集。GAFAMの一角を占めるビッグテックは、ビジネスをどのように考え、実行し、成果を上げているのか。ビジネスフレームワークからその要因を読み解いていく。

 今回は、1996年にアップルに復帰したジョブズと現CEOのティム・クックが行ってきた製品ラインや製造プロセスの改革を、バリューチェーンの観点から見ていく。

ジョブズが引き入れたクックによるIBM型製造体制の確立

最強 Apple フレームワーク』(時事通信社)

 スティーブ・ジョブズは初代マッキントッシュ(Macintosh)を発売した翌年、1985年にアップルを追い出されたことは有名な話です。

 ジョブズ自身は失意の中でも、ネクスト(NeXT)という、のちにアップルに買収され、現在のマック・アイフォーン・アイパッドのソフトウェア基板となるOSを含む理想的なコンピュータ企業の設立、そしてピクサー(Pixar)という、こちらもディズニー(Disney)に買収されたコンピュータを駆使したアニメーション企業の成功に尽力してきました。

 ジョブズ不在のアップルは、顧客ニーズに合わせるべく、マックの多方面への展開を続け、商品の種類は30種類を上回るほどに膨れ上がっていました。

 その結果、製造・流通の非効率性だけでなく、在庫を蓄積する倉庫の費用までも、赤字の原因となっていたのです。

 1996年にアップルに復帰したジョブズはすべての製造を停止させ、製品と製造プロセスの改革に着手しました。