井上尚弥、通称・怪物(モンスター)。2023年11月現在、25戦25勝22KO。デビューからわずか4戦で日本王座に、6戦で世界王座に輝き、アジア人初の4団体統一王者となったボクシング界の生ける伝説である。
森合正範氏(東京新聞運動部記者)は井上尚弥の強さを知るため、彼に敗れた選手に詳細な取材を行い『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』(講談社)を上梓した。井上尚弥と対峙した選手は、何を語ったのか、井上尚弥をどう評価しているのか──。森合氏に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)
──2023年12月26日に、井上尚弥(WBC・WBO世界スーパーバンタム統一王者)は4団体王座統一を賭け、WBA・IBF世界スーパーバンタム級統一王者のマーロン・タパレス選手との対戦を予定しています。「KO決着を見せたい」「圧倒的な強さで勝ちたい」と井上選手は自信満々の発言をしています。井上選手の発言は、実現するのでしょうか。
森合正範氏(以下、森合):ボクシングに「絶対」はありません。勝敗は、本当に終わってみないとわかりません。
ただ、これまでも井上選手は試合前に、いろいろな発言をしてきました。そして、いつもそれをはるかに上回る勝ち方をしています。なので、今回もすごい結果が待っていると私は思っています。
直近の2023年7月の元WBC・WBO世界スーパーバンタム級統一王者のスティーブン・フルトンとの試合前には、井上選手はKO宣言をしていません。にもかかわらず、8回TKOで井上選手は勝利を収めた。
今回のKO宣言は、井上選手の自信の表れだと私は感じています。それを言えるだけの準備もしているということでしょう。きっと、皆さんが思っている以上の結果が見られることを期待しています。
──タパレス戦を前にチェックしておくべき、これまでの井上選手、タパレス選手、それぞれのオススメの試合を教えてください。
森合:タパレス選手はサウスポーです。これまでの井上選手がサウスポーと対戦した試合を見ておくといいかもしれません。2014年12月30日のオマール・ナルバエス戦、2018年10月7日のファン・カルロス・パヤノ戦。
前者のナルバエス選手は、当時39歳ながらWBO世界スーパーフライ級王座で11度もの防衛に成功しているアルゼンチンの英雄。後者のパヤノ選手は、元WBA世界バンタム級スーパー王者です。
しかし、いずれの試合も井上選手が圧倒的な強さで、早いラウンドで勝利を収めました。これらの試合を見ると、井上選手がこれまでにサウスポー相手にどのような闘い方をしているかがわかると思います。
タパレス選手は、日本人選手との対戦経験が豊富です。直近では2021年12月に、勅使河原弘晶選手と対戦しています。この試合はタパレス選手のパワーを知るにはもってこいだと思います。