楽しみに待ちたいナルバエス・ジュニアとの戦い
森合:井上選手を超える選手について考えることは、時期尚早でしょう。我々は、まだ井上選手の強さの底を見ていません。
井上選手を超える選手ということではなく、彼がどのくらい強いのか、彼があとどれくらいの引き出しを持っているのかということを知っていくことが先です。これから先も続くであろう伝説を、試合を通して見ていきたいと思っています。
ただ、私はナルバエス選手の息子に期待しています。彼は目の前で自分の父親が井上に負ける姿を見て、ボクサーになることを決意しました。9歳のときでした。
今、ナルバエス・ジュニアは18歳。アマチュアのユース世代のアルゼンチン代表で、2028年ロサンゼルス五輪での金メダルを目指し、トレーニングに励んでいます。コーチは、2018年に引退した父・オマールです。
ナルバエス選手と井上選手は18歳差です。井上選手とドネア選手は11歳差。ナルバエス・ジュニアと井上選手は12歳差です。年齢的に対戦の可能性はなくはないと思います。ナルバエス・ジュニアがオリンピックに出て、プロに転向して何年かしたら、井上選手と対峙する試合が実現するかもしれません。
父親が負けた試合を見て泣いていた少年が、井上選手と闘うとなれば、ドラマ性もありますし、非常に注目される試合になるでしょう。ただ、ボクシングの世界は、甘いものではありません。トップ中のトップの井上選手と対峙するために、ナルバエス・ジュニアが超えていかなければならない山はたくさんあります。
いかにして彼が、井上戦にたどり着けるか、見守っていきたいと思っています。

──12月のタパレス戦で「もし」井上選手がスーパーバンタム級で4団体統一王者になれば、次はフェザー級に挑戦し、5階級制覇に挑むことが予測されます。30歳という井上選手の年齢を考慮すると、今後さらに階級を上げて、マニー・パッキャオのように6階級制覇もあり得るのではないのでしょうか。
森合:井上選手は、2024年いっぱいまではスーパーバンタム級で闘いたい、その後、フェザー級に挑戦するという話をしています。
ただ、井上選手自身は、タイトルや数字にあまり興味がない。何階級制覇ということにもさほど関心がなく、絶えず強い相手と闘いたいというタイプです。将来的にどこまでいくかはわかりませんが、強い相手を求めていけば、自ずと階級も上がっていくと思います。