ホワイトソックスとの契約合意が報じられた村上宗隆(写真:産経新聞社)
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 ヤクルトからポスティングシステムを通じてメジャー挑戦を目指していた村上宗隆が20日(日本時間21日)、最終的にシカゴ・ホワイトソックスと2年総額3400万ドル(約53億円)で契約合意に達した。ホワイトソックスも21日(同22日)に村上の入団を正式発表。球団公式Xを通じて村上の新ユニホーム姿とメッセージ動画を公開し、背番号も5に決まった。

 ただ、メジャーリーグ公式サイト「MLB.com」や米スポーツ専門局「ESPN」など米主要メディアが一斉に伝えた第一報は日本の野球界のみならず、米球界の編成関係者にも驚きをもって受け止められた。

 米東部時間22日17時(同23日7時)の交渉期限直前、いわば“駆け込み”に近い形でまとまったこの契約は当初取り沙汰されていた超大型契約とは一線を画すものだったからだ。

ホワイトソックスが村上を欲した理由

 だが、この決着を「市場評価の失敗」や「期待外れ」と切り捨てるのはあまりに短絡的である。むしろ今回の契約はMLBという巨大なスポーツ産業が村上という若き日本のスーパースターに「いま何を恐れ、何に賭けようとしているのか」を如実に映し出す「鏡」にも近い。

 村上宗隆――NPB史上最年少の三冠王。そして日本プロ野球の本塁打記録を塗り替えた左の長距離砲。その看板に疑いを差し挟む余地はない。それでも市場は慎重だった。

 三振率の高さ、スイングの粗さ、MLB投手の繰り出すフォーシーム系高速インハイへの適応力。アナリティクスが支配する現在のメジャーリーグにおいて、これらは看過できないリスクとして扱われた。

 だからこそ、ドジャースやメッツ、ヤンキースといった“勝利を義務づけられた球団”は、最後の一歩を踏み出さなかった。失敗が許されない組織にとって、村上は「魅力的だが不確実」な投資対象だったのである。

 一方で、なぜホワイトソックスは踏み込んだのか。今季102敗という歴史的低迷の只中にある再建球団が、なぜこのタイミングで最も評価が割れた日本人スラッガーに触手を伸ばしたのか。その答えは、ホワイトソックスの若き編成トップ、クリス・ゲッツGMの視線の先にある。