2024年12月22日、全国高校駅伝男子3区、八千代松陰の桶田悠生(左)を抜く佐久長聖の佐々木哲(ともに当時) 写真/共同通信社
(スポーツライター:酒井 政人)
箱根駅伝に出場したOB選手は59人、全国トップクラスの実績を誇り、12月21日に行われる全国高校駅伝3連覇を目指す長野の佐久長聖高校。駅伝監督である高見澤勝氏の『佐久長聖はなぜ強いのか?「人」を育てチーム力を上げる指導メソッド』(竹書房)の構成を担当した酒井政人氏が強さの理由、「駅伝力」の真髄に迫ります。(JBpress)
ダブルエースが卒業したチームの変化
全国高校駅伝を連覇中の佐久長聖高(長野)は、濵口大和(中大)、佐々木哲(早大)ら前回のVメンバー6人が卒業。今季は大幅な戦力ダウンがささやかれていた。新チームとなり、選手たちは「5位以内」という目標を掲げたという。しかし、高見澤勝監督は選手たちの取り組みを見て目標を上方修正した。
「子供たちは戦力ダウンを冷静に見ていたと思います。最初は、『全国高校駅伝で5位以内』という目標を持ってきました。ある種、妥当だなと感じたんですけど、ピリッとしなかったんですよ。一昨年、昨年は『日本一』を目指しました。『優勝』と『5位以内』を目標に置いたチームは全然違う。子供たちに『去年ほどではなくてもいいだろう』と雰囲気があったので、目標を『3連覇』に切り替えました。現実的には結構厳しい目標ですが、3連覇は我々しか語れません。目標を高くしたことで、選手たちも大きな成長があったかなと思います」
チームは昨年、全国高校駅伝で連覇を果たすと同時に、12年連続で「5位以内」を達成した。その記録を継続するだけでなく、より高い山にチャレンジすることで、選手たちの取り組みが変わり、意識レベルが高くなったのだ。
一方で高見澤監督はチームの実力を冷静にジャッジしていた。
「戦力の大幅ダウンは強く感じていたので、どのようにチームを作り上げていくのか。早い段階から見据えてできたのはプラスだったかなと思います。インターハイを含めてトラックシーズンは結果を求めるのではなく、駅伝に向けて組み立てきたんです」
昨年のインターハイはダブルエースが大活躍した。1500mは濵口が2位(日本人トップ)、佐々木が3位。濵口は5000mで7位に入り、佐々木は3000m障害を制している。抜群のインパクトを残したが、今年は“凄さ”を見せられなかった。
暑熱対策でインターハイ5000mはタイムレース決勝となり、1組に入った酒井崇史(3年)と福島命(3年)が積極的なレースを展開。入賞ラインとは30秒以上の開きがあったが、高見澤監督は、「駅伝につながる走りになったんじゃないかなと思います」と評価していた。
8月上旬には恒例であるライバルチームとの「合同合宿」を実施。鳥取城北、報徳学園(兵庫)、八千代松陰(千葉)、拓大一(東京)、美方(福井)、中越(新潟)、東海大相模(神奈川)、埼玉栄、大阪の選手たちと走り込んだ。OBを含めて、過去最多となる約280人が参加した。
夏合宿の成果もあり、選手たちは調子を上げていく。9月下旬から10月上旬に行われた国民スポーツ大会では男子少年A5000mで酒井崇史が13分55秒96をマークして10位に入ると、成年カテゴリーの3000m障害に出場した加藤結羽(3年)が高校歴代9位となる8分45秒77で5位に食い込んだ。
10月5日の日本海駅伝では2時間4分24秒で優勝した鳥取城北Aに大差をつけられたが、2年生だけで編成したBチームが2時間7分12秒で2位、3年生中心のAチームが2時間7分21秒で3位に入った。
春から夏にかけては「大丈夫か?」という雰囲気だった佐久長聖だが、確実に力をつけてきた。