東洋大・酒井俊幸監督 写真提供/ナイキジャパン(以下同)
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(スポーツライター:酒井 政人)

全日本選考会の敗因とその後の躍進

 今年の箱根駅伝は4年生エースふたりを欠きながら、総合9位でフィニッシュ。窮地を乗り越えて“20年連続シード”を獲得した東洋大だが、5月25日の全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会で悪夢が待っていた。わずか11秒差で18年連続出場を逃したのだ。その敗因を酒井俊幸監督はこう分析している。

「今年は全日本選考会が例年より1か月早かったなかで、冬季に主力選手の体調不良があり、彼らの始動が遅れたんです。また本来なら出場するべき選手がスタートラインに立てなかった。そういう状況の積み重ねが全日本の出場権を逃した原因だと考えています」

 箱根駅伝4区で7人抜きを演じた岸本遼太郎(4年)は足裏にウイルス性のイボができ、山上り5区を担った宮崎優(2年)は左股関節に違和感が出たため、全日本選考会を欠場。箱根駅伝で2区を務めた緒方澪那斗(4年)はインフルエンザ感染後に肺炎を患い、2年連続の6区に出走した西村真周(4年)は右大腿骨疲労骨折に続いて恥骨を痛めた。ふたりは出場したものの、まだ仕上がっていなかった。

 全日本選考会が終わった直後は、「本戦で通用するレベルがどれぐらいなのか、学生はしっかり理解できていないように映りました」と酒井監督。そのため、「全日本選考会と同じ10000mをもう一度走ることで立て直そうと考えたんです」と10000mレースに再度出場した。

 6月22日のあおもりディスタンスチャレンジ記録会10000mは緒方が28分27秒50でトップを飾ると、西村が28分34秒86、迎暖人(2年)が28分55秒92と3人が自己ベストを更新。7月20日の関東学生網走夏季記録挑戦競技会10000mは松井海斗(2年)が28分46秒98で学生3位、緒方が28分48秒44、網本佳悟(4年)が29分26秒50をマークした。

「青森の記録会では緒方と西村が全日本大学駅伝出場校の選手に競り勝ち、日本人学生のなかで上位を占めました。網走のレースでは暑さが厳しいなかでも松井が大きく崩れることなく走りました。学生にとっては自信になったと思います。特に2年生は『狙っていくぞ』という気持ちになり、上級生も『負けられない』という意識が出てきた。チームは良い雰囲気で夏合宿に入ることができました」